靖国参拝は日本の戦略的利益にとって無意味 ダニエル・スナイダー氏に聞く

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--安倍政権にとって戦争責任を受け入れることは、まるで弱さを示すことのようですね。

「戦争責任の問題は物議を醸し出す。この件に関して私が参考にするのは、終戦60周年となる2005年に読売新聞が連載した非常に重要な記事だ。その記事は「戦争責任」という題で、上下2巻の本として日本語で出版されている。私は渡邉恒雄氏と長い対談を行ったが、この「戦争責任」が誰にあるのかという問題は彼にとって難しい質問だった。戦争責任を負うべきなのは、単に名もなき「システム」という訳ではなく、かといって国全体が負うものでもない。彼は、日本の崩壊を招いた悲惨な決定を下した特定の個人に責任があると主張していた。それはA級戦犯と見なされた20人ほどだけではない。

これとは対照的に、安倍首相は戦争はこれらの人々の責任ではないと実質上は述べている。彼はまた、日本の法律ではこれらの人々は戦犯だと見なされない、と言っている。読売新聞の連載の要点は、国際社会だけがこれらの個人の戦争責任を決めるべきではないということだ。そして日本国民が自分自身の判断で決めるべきだ、と述べている。しかし、首相の声明はこの意見を認めていないことを示唆している。

 戦争責任とA級戦犯弁護をなぜ関連づけるのか

日本が世界やアジアでリーダーシップを発揮し、さらに世界の安全に対して大きな役割を果たして行きたいと思っているのであれば、もちろん私は両方とも支持するが、どうして東条英機に対する弁護と戦争責任を関連づけるのだろうか。ぜひ安倍首相から説明を聞いてみたい。

--米国政府の反応に対する判断を首相官邸が見誤ったと考えますか。それとも、米国がすんなり容認すると官邸は判断したのでしょうか。

「私は、米国が批判する声明を出すことを、彼らは予期していなかったのだと思う。しかし彼らは、米国が靖国参拝に良い顔をしない可能性があるという警告をたくさん受け取っていたはずだ。米国政府関係者や有識者が、日本にそのことを言い続けていたのだから。

バイデン副大統領が2013年12月に訪日した際、このことを安倍首相に告げていたと私は考えている。批判的な反応を首相官邸が不意に食らうはずはない。しかし、米国側からのメッセージの大半は、内密の外交手段を通して伝えられる。そのため、米国が対応を公にしたため、不意を突かれた日本政府関係者もいたことだろう。

日本の官僚は米国から非難が出ることをすでに計算に入れていたのかもしれない。しかし彼らは、日米間にはこの件よりも大きな戦略上の懸念がある、という結論に達していたのかもしれない。安倍政権は、沖縄・普天間にある米海兵隊基地の移転問題を前進させ、環太平洋戦略的経済連携協定への日本の参加、日本経済成長の回復といったいくつかの重要課題を成し遂げた。日本の官僚は、これらを達成したことで靖国神社参拝に対する非難は抑えられるという意見に達していたのかもしれない。

ますます勢力を増し、アジア地域の支配をもくろむ中国に対抗する強い日本を米国は必要としている、という意見がワシントンに広がっている。このことも、靖国参拝に好意的でない米国政府が最終的には参拝を容認するだろうという予測を安倍政権が持つ要因となったと思われる。これは不合理な予測ではない。米国の中でも、この予測を正しいと考える人がいるだろう」

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