アメリカで「中絶禁止法」が次々成立する事情

8州で中絶の権利に意義を唱える州法が成立

全米の反中絶活動家らは、統一的な活動よりも社会的なエネルギーを活用し、互いに活力を与え合っている。「全米の中絶に反対する州で、波が起こっている」と、全米プロライフ(中絶反対)女性会議を運営するスー・スウェージ・リーベルは言う。「みんながアクセルを踏み込み、ゴールを目指して突進している」。

反中絶運動の草の根のネットワークが何であるかは、定義しにくい。

アメリカで最も厳しい中絶禁止法

活動家らは、政治的なメーリングリストなどではなく、カトリック教会や福音派教会を通じて活動を組織する傾向にある。なかには、中絶反対団体「ライト・トゥ・ライフ」の支部などを通じて、活動が組織される場合もある。

活動家らの主張はそれぞれに異なっており、例えば、妊娠6週目以降を禁止とするのか、あるいは20週目以降かなどの違いがある。しかし、そうした活動が寄り集まって、中絶を違法としたい人たちの声が増幅され、中絶を合法のままにしておきたい人たちの声を圧倒し始めている。

ミズーリ州のロビイストのリーは言う。「社会的な動きが独り歩きをし始めることがある」。

アラバマ州で起こったのもそうした状況だ。同州では5月15日に、アメリカで最も厳しい中絶禁止法が成立した。この法律は、母親の健康状態に「重大な」リスクがある場合を除いて、中絶を実質的に全面禁止するというものだ。アラバマ州プロライフ連盟の代表であるエリック・ジョンストンは、ここ数カ月の間に他州で成立した多くの反中絶法は規制が不十分だと感じている。

彼が不十分だと見なす法律の中には、いわゆる「ハートビート(心拍)法」も含まれる。ハートビート法は、妊娠6週目以降の中絶を禁止するものだ。胎児の「心臓」となる部分の鼓動は、妊娠6週目頃から超音波で検知できるようになるという。ジョンストンは、性的暴行や近親相姦などによる妊娠でも、まず優先的に考えるべきは胎児だと言う。ただし、母親の命が危険にさらされる場合は別だと話す。

昨年夏、アメリカ議会上院はブレット・カバノーの連邦最高裁判事就任を承認しようとしていた。72歳のジョンストンはこれをチャンスだと感じた。ジョンストンはそれまでにもさまざまな中絶規制を打ち出してきたが、このとき最も厳しい法案を作成した。その文言が、今回の最終的な法律でも中心となった。

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