目標設定を間違うチームが力を尽くせない理由 行動、成果、意義の「最適」を探るのが肝要だ

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この3つのタイプの目標設定にはそれぞれにメリット・デメリットがあり、一概にどれがよい、悪いとは言えません。

Aの行動レベルの目標設定には、チームメンバーが自らの取るべき行動を明確にしやすいというメリットがあります。「事例を交えてわかりやすく伝える本をつくる」という具体的な目標が提示されたメンバーたちは、世の中の成功したチームの事例について調査したり、チームの法則をわかりやすくイラストで表現してくれたりするイラストレーターを探したり、といった行動をすぐに起こすことができます。

逆に、Cの意義レベルの目標設定には、チームメンバーが自らの取るべき行動を明確にしにくいというデメリットがあります。「日本全体のチーム力を高める」という目標が提示されても、すぐにそのためにどんな行動を起こせばいいかを思いつくメンバーは滅多にいないでしょう。この目標設定だけでは、メンバー全員が途方にくれてしまうリスクもあります。

一方で、意義レベルの目標設定には、チームにブレイクスルーが起きやすいというメリットがあります。「日本全体のチーム力を高める」という抽象的な目標があることによって、「事例を交える」や「わかりやすく伝える」ということ以外のアイデアがメンバーから生まれる可能性があります。

逆に、Aの行動レベルの目標設定には、チームメンバーからブレイクスルーを起こすようなアイデアは生まれにくいというデメリットがあります。「事例を交えてわかりやすく伝える本をつくる」という目標からは、その行動目標以外のアクションは生まれにくいはずです。

Bの成果レベルの目標設定は、アクションのわかりやすさについても、ブレイクスルーの起きやすさについても、Aの行動レベルである目標設定とCの意義レベルである目標設定の中間の効果があると言えるでしょう。

チームに適した目標設定をつくれるか

3つの目標設定のうち、どれが自分のチームにとって適切かは、チームを構成するメンバーの能力レベル、思考力や行動力によって変わります。

チームメンバーがみずから考え動くことができないのであれば、行動レベルで目標設定しなければパフォーマンスにはつながりません。場合によっては行動をマニュアルレベルまで具体的に落とし込んだうえで、「何分以内にこのアクションを完了させる」というような目標設定をする必要があるでしょう。

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一方で、チームメンバーが自ら考え動くことができるのであれば、意義レベルや成果レベルで目標設定したほうが、パフォーマンスは生まれやすくなります。意義レベルや成果レベルの目標設定をすることで、その場その場に応じた臨機応変で柔軟な対応が生まれる可能性があるからです。

それが会社の職場であっても、職場を超えたプロジェクトであったとしても、学校の部活やサークル・ゼミであったとしても、家族や友人との旅行や飲み会であったとしても、チームとしてのパフォーマンスを最大化したいのであれば、このような3つの目標の特徴を理解したうえで、自らチームの目標設定を適切にしなければなりません。

どの抽象水準で目標設定をするのか、もしくは3つすべてに関して目標設定をするのかは、メンバーの能力レベルなどを見極めたうえで設定する必要があるのです。

麻野 耕司 リンクアンドモチベーション取締役、ヴォーカーズ副社長

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あさの こうじ / Koji Asano

2003年 慶應義塾大学法学部卒業。株式会社リンクアンドモチベーション入社。2010年、中小ベンチャー企業向け組織人事コンサルティング部門の執行役員に当時最年少で着任。2013年、成長ベンチャー企業向け投資事業立ち上げ。複数の投資先を上場に導く。2016年、国内初の組織改善クラウド「モチベーションクラウド」立ち上げ。2018年、同社取締役に着任。同年株式会社ヴォーカーズ取締役副社長を兼任。国内最大級の社員クチコミサイト「Vorkers」を展開。著書に『THE TEAM 5つの法則』 (幻冬舎)。

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