ニセ科学「ホメオパシー」の実践が危険な理由 毒物の「ヒ素」でさえ薬にしてしまう謎理論

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ホメオパシーを使用していた助産師は、自然な出産にこだわりがあったようです。ホメオパシーが受け入れられる背景に「自然は安全で、薬や注射は不自然で危険」という思い込みがあると思います。中耳炎が治らないのになかなか病院を受診しなかったり、ワクチンを否定したりするケースも、そうした考えが背景にあります。

自然が本当に安全なのか、よく考えてみましょう。医学が発展するまでは、たくさんの子どもたちが死んでいました。死亡統計がとられるようになった明治時代には、1年間における乳児死亡率は1000人あたり約150人でした。

ホメオパシーが危険なシンプルな理由

現在の日本の乳児死亡率は1年間において1000人あたり約2人。

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つまり、1歳になるまでに1000人の赤ちゃんのうち2人くらいが亡くなるということです。これは歴史的に見ても、現代において他国と比較しても大変少ない数です。

明治時代の日本では、現代の日本と比べて、約75倍もの赤ちゃんが亡くなっていました。江戸時代には、子どもの半数が成人するまでに死んだといいます。その死因の多くが天然痘(てんねんとう)や麻疹といった感染症でした。天然痘も麻疹も、今ではワクチンで予防できる病気です。

本来の「自然」は、多産多死です。現在の日本の社会では子どもが亡くなることが珍しくなったためか、自然が本来安全ではなかったことが忘れられています。

「自然は安全」という誤解に基づいて適切な医療を遠ざけるからこそ、ホメオパシーは危険なのです。

名取 宏 内科医

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なとり ひろむ / Hiromu Natori

大学病院勤務、大学院を経て、現在は市中病院に勤務。診療の傍ら、主にインターネット上で「科学」と「ニセ科学」についての情報を発信している。著書に『新装版 「ニセ医学」に騙されないために』(内外出版社)がある。BLOG:NATROMのブログ

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