ニセ科学「ホメオパシー」の実践が危険な理由

毒物の「ヒ素」でさえ薬にしてしまう謎理論

レメディに特別な効果がなくても、効いたように誤解することはあります。例えば、不安に効くとされるヒ素のレメディを飲んで、不安がやわらぐこともあるでしょう。レメディに特別な効果がなくても、単になんだか薬っぽいものを飲んだことが安心感をもたらすのです。あるいはレメディを使ったあとに風邪が治ったとして、単に自然治癒しただけなのにレメディが効いたと誤認することもあります。

つまり、ホメオパシーは、いわばおまじないのようなもの。転んで膝を擦りむいた子どもに、「いたいのいたいの、とんでけー」と言ってあげると泣き止むのと同じです。薬効成分が含まれていないレメディには副作用はありません。おまじないとしてはよくできています。ホメオパシーがヨーロッパにおいて伝統的な民間療法として残ってきたのも、こうした理由があるのでしょう。おまじないですから、ベルリンの壁でも般若心経でもなんでもありなのです。

おまじないとしてだけ使用されていれば、ホメオパシーの問題点は高価であることくらいでした。しかし、残念なことに、おまじない以上の効果が信じられているせいで、子どもに実害が生じています。

「ワクチンが毒」という謎理論

インターネットでは、さまざまなホメオパシーの体験談が語られています。例えば、中耳炎の子どもに対して母親がホメオパシーによる治療を続け、2週間以上も高熱が続いたケースでは、祖父母から「孫を殺す気か」と言われて総合病院を受診し入院となりました。

ホメオパシーは単なるおまじないだとわかっていれば、数日も熱が続けば病院を受診するでしょうに。この事例は、子どもに必要かつ適切な医療を受けさせていないので、児童虐待の一種である医療ネグレクトとみなされます。

ホメオパシーは「ワクチンは毒だ」という主張と結びついていることもあります。ホメオパシー団体の言い分によると、「ワクチンの成分を薄めたレメディによって病気が治った。よって、ワクチンは病気の原因に違いない」ということのようです(※2 日本ホメオパシー医学協会の予防接種に対する見解)。

しかし、先に述べたとおり、レメディによって本当に病気が治ることは証明されていません。レメディを使ったことによる安心感や、レメディが効くに違いないという思い込みから、病気が治ったと誤認しただけだと私は思います。実際には、ワクチンはさまざまな病気を防ぎます(※3 Facts for Parents: Diseases & the Vaccines that Prevent Them)。

レメディそのものは、ただの砂糖玉なので安全で無害ですが、「ワクチンは毒だ」という考えは有害です。

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