ルネサス、7年ぶり赤字転落でたどる「茨の道」 財務悪化と幹部交代で競争力も失いつつある
コスト削減のため、自社工場の一部を一時停止するという半導体業界では異例の「奇策」も検討したが、供給体制の整理がうまくいかず、「最大1カ月」とされた停止期間はゴールデンウイーク近辺の10日程度にとどまった。「最大想定の3、4割程度」(柴田CFO)という短期に終わり、肝心のコスト削減効果も1億円台に過ぎない。
これら一連のエピソードが意味するのは、ルネサスの競争力の低下だ。
変化の激しい半導体産業で各社がしのぎを削るのは、自動運転や人工知能(AI)といった最先端技術だ。ルネサスも世界トップ級のシェアを誇る自動車向けマイコンや、得意とする省電力化の技術を売りに「R-car」という集積回路を開発。自動車メーカー向けに攻勢をかけてきた。産業機械向けにも、低電力、低コストで耐久性に優れた特定用途向けの「e-AI」を持つ。
しぼむ最先端の製品開発
これらは顧客の要求に対して仕様を変えたり、ニーズを先回りして提案したりする柔軟性が求められるほか、研究開発に多くの資金と時間が必要になる。うまく開発できれば利益率の高い製品となり、将来の事業の柱にもなり得る。2014年のリストラ時に会長だった作田久男氏は当時の東洋経済のインタビューで、「R&D(研究開発)に集中することで強い商品を作り、納得のできる粗利を出していきたい」と語っていた。
しかし、現在R-carやe-AIといった戦略は急速にしぼみつつあるのが現状だ。2018年は自動運転のデモカーをアメリカ・ラスベガスの家電見本市「CES」に出展するなどして話題を集めたが、2019年の出展はなし。際だった進化を示せなかったからとの説明だが、2019年のCESには自動車関連の出展も目立ち、存在感を示すせっかくの機会を逃した格好だ。
また、肝心の研究開発費も思うように捻出できていない。ルネサスは今春、約1000人の希望退職者を募るなど、一層の固定費抑制に動いているが、研究開発費もそのあおりを食う形で増やせない状況が続いている。関係者によると、R-carなど新製品開発の動きは止まってはいないものの鈍くなっているという。
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