なぜ今?京急空港線「大幅値下げ」の真相 ライバルの東京モノレールはどう出るか

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それは、羽田空港アクセスにおける京急のライバルである東京モノレールの存在だ。2017年度航空旅客動態調査によれば、羽田空港へのアクセス手段別シェアは、1位が京急の32.8%で、2位のモノレール24.7%を大きく引き離す(3位以下は空港バス16.8%、自家用車11.4%など)。京急が品川、モノレールが浜松町と、都心と結ぶ駅が違うといった要因もさることながら、モノレールの浜松町―羽田空港第2ビル間の運賃が483円(ICカード)と、京急よりも割高であることは京急優位の要因の1つである。

羽田空港アクセスで京急と競合する東京モノレール(編集部撮影)

京急の羽田空港乗り入れは1998年で、東京モノレールと比べると歴史は浅い。そのため、「地方にお住まいで、東京に来る機会が少ないお客様の中には、空港アクセス手段としてまずモノレールを考える人が少なくない」(京急)という。現状でも京急の運賃のほうが安いのだから、今あえて急いで値下げする必要はなさそうに思えるが、京急にとってはそうでもないらしい。

2020年夏の東京オリンピック開催時には、20年以上ぶりに、つまり京急の羽田空港乗り入れを知らずに東京にやってくるという人もたくさんいるに違いない。京急としては、何もせずに2022年度の加算運賃廃止を待つよりも、東京オリンピック前に加算運賃を引き下げて、「圧倒的な価格差」を武器に利用者を取り込むという積極策に出た。「値下げ」を大々的にPRするため、2019年度に10億円の広告宣伝費を投入する。京急としては異例の規模だ。

モノレールも対抗策?

攻勢をかける京急に、東京モノレールはどう対抗するのだろうか。東京モノレールは現在、土・日・祝日などに浜松町から山手線に乗り換えた後、山手線内各駅のどこで降りても500円で行けるという割引きっぷを販売している。羽田空港第2ビル駅から池袋に向う場合の運賃は742円なので、最大242円の割引というわけだ。東京モノレールがこうした割引きっぷの適用期間や適用範囲を広げる、あるいは運賃値下げに踏み切って京急に対抗する可能性は十分考えられる。

東京モノレールの担当者は「何らかの対策は考えている」と明かす。ただし、まずは「10月、11月の利用状況を見てから判断する」としており、京急と同時期に実施するわけではなさそうだ。

2015年の首都高速道路中央環状線全通で新宿―羽田空港間の所要時間は従来の約40分から19分へと短縮され、リムジンバスの利便性が劇的に向上した。鉄道でも値下げといった形で利便性が高まれば、利用者にとっては羽田空港がますます身近になる。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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