金メダルから21年「白馬ジャンプ台」厳しい現実 日の丸飛行隊の感動も、競技人口減で苦境

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「名木山は白馬ジャンプ台に近いので、そこに50mと20mのジャンプ台を設置して、オールシーズン使えるようになれば、我々指導者も複数のカテゴリーを掛け持ちで教えられますし、選手同士の交流も図りやすくなる」と目時氏は期待を口にする。だが、そのためには2億円程度の費用がかかるという見積もりもあり、人口9000人という小さな白馬村には重すぎる負担になってしまうのだ。

「この21年間には何度かジャンプ競技のルール変更があり、白馬ジャンプ台の改修も行ってきました。いちばん大きかったのが『インラン』という助走路を氷にする設備の設置。長野五輪当時は氷にしなくてもよかったのですが、それが国際スキー連盟から義務付けられたんです。費用は1ジャンプ台につき億単位。

ラージヒルは県、ノーマルヒルは村の所有。村にも負担がのしかかりましたが、国体開催との兼ね合いで日本スポーツ振興センターから改修費の補助をいただき、最小限の金額にとどめることができました」と関口課長も話すように、財政面をこれ以上、逼迫させるわけにはいかない。加えて言うと、白馬村にはジャンプ台だけでなく、アルペン会場、クロスカントリーの会場と長野五輪のレガシーが3つある。

それぞれをしっかりと維持管理し、各競技を発展させていくことも考えなければならない。地元自治体の果たすべき役割は多いのだ。

白馬村が置かれた環境は年々厳しさを増している

このようにジャンプ台とジャンプ競技を取り巻く環境は険しいが、渡部暁斗という地元のスター選手が活躍し続けているうちに、何らかの手を打つことも大切だ。ジャンプ台の来場数増加のためには、より一層のアピールや告知活動が必要になってくる。

ジャンプ競技人口増加を目指すなら、体験会や説明会を増やす、サッカーJリーグの松本山雅FC、プロ野球独立リーグ・BCリーグのの信濃グランセローズ、バスケットボールBリーグの信州ブレイブウォリアーズなど他競技団体との連携強化などの工夫もあっていい。地元とジャンプ関係者には力を振り絞ってもらいたいし、白馬の実情を東京五輪にもしっかりと生かすべきだ。

(文中一部敬称略)

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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