金メダルから21年「白馬ジャンプ台」厳しい現実 日の丸飛行隊の感動も、競技人口減で苦境

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「底辺拡大を図るため、白馬を筆頭に県内で年数回の体験ジャンプを実施しています。この4月末にも荻原健司さん(北野建設スキー部GM)が声をかけて長野市の子どもたち10人程度が飯山の体験ジャンプに参加してくれました。健司さんの知名度や暁斗の活躍もあり、近年はかなりの盛り上がりを見せるのですが、実際に競技を始めるかというと、必ずしもそうではないのが実情です」と目時氏も厳しい表情をのぞかせた。ジャンプに本腰を入れようとする小学生が増えない背景には「価値観の変化」が少なからずあるようだ。

地元・白馬の小学生であれば、昔は「スキーは生活や遊びの一部」と誰もが捉え、冬場になれば当たり前のようにスキーを履いていた。渡部兄弟の出身校である白馬北小学校の校庭には5・10・15mのジャンプ台3つがあり、彼らも嬉々として飛んでいたという。

現在も1月には「ジャンプ週間」が設けられ、子どもたちが指導者から飛び方の基本を教わる機会があって、地域の伝統文化を大事にする姿勢は変わらない。ただ、「スキー用具にはお金がかかる」「ケガが心配」と危惧する声も上がり始めている模様で、村民の意識も徐々に変わりつつあるようだ。

白馬の練習環境も十分に整っていない

「白馬ジャンプ台では、夏場に『サマーグランプリ』や『サマーコンバインド』『記録会』などいくつかの大会が行われていて、夏場のほうが稼働率が高いのですが、住民への告知が少ないせいか、応援に来てくれる方も多くないですね。『ジャンプ台に上ったことがない』という住民の方もいるので、そういう方を呼び込むような活動もやはり必要だと思います」と目時氏は地元の関心度を上げるアプローチが大事だと考える。

街から見た白馬八方尾根スキー場(筆者撮影)

白馬の練習環境が十分に整っていないことも1つの問題点と言われる。白馬ジャンプ台はラージヒルとノーマルヒルという国際大会開催規模の大型施設で、利用者は高校生以上。

中学生以下は八方尾根スキー場東斜面下の名木山ゲレンデにある50mの中型ジャンプ台、あるいは岩岳スキー場にある20mの小型ジャンプ台を使うことになるが、老朽化が著しいうえ、夏場は使えないのだ。

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