NHK独り勝ちの皮肉、民放離れが進むワケ
NHKの視聴率の勢いが止まらない。2008年度上半期(3月31日~9月28日)は、北京五輪や大河ドラマ「篤姫」、あるいは「ニュース7」などの報道が好調で、ゴールデンタイム(19~22時)の視聴率(関東地区)で単独首位13・6%を獲得。下半期も昨年末の「紅白歌合戦」では、第2部の視聴率が3年ぶりに40%を超えた。
こうしたNHK躍進の背景について、08年は中国・四川大地震や米リーマン・ブラザーズの破綻など事件が多く、報道への信頼度の高いNHKに視聴者が集まったようだ。加えて、最近、業界内で指摘されているのが視聴者の“巣ごもり”だ。つまり、不景気の影響で、外出を避け、家でテレビを見るようになっているのだ。
ドラマ、野球が低迷しクイズだらけになった
視聴者が茶の間に戻ってくれば、民放にも追い風のはず。ところが、視聴率は伸び悩んでいるのが実態だ。これは、各局がタレントに依存した安易な作りの番組を増やしていることと無縁ではないだろう。
特にこの1~2年で多くなっているのが、クイズ番組。フジテレビの「クイズ! ヘキサゴンII」で常識的な問題に珍解答を連発するおバカタレントの人気に火がついたのをきっかけに、他局も追従。現在ゴールデンに放送されているだけでもフジが週5本、テレビ朝日が3本と多く、クイズ全盛だ。
しかも、クイズ番組はテレビ局にとってコスト圧縮の意味でも重宝する。セットを使い回せるうえ、ギャラの安い芸能人を多用することで制作費を抑えられるからだ。
一方で、ドラマやプロ野球といった、かつてのキラーコンテンツに元気がなくなったことも大きい。テレビ広告費が初の2兆円を突破した1997年は視聴率30%を超えるドラマがNHKと民放合わせて5本あったが、昨年はゼロ。テレビ広告費が過去最高となった2000年ごろまでは大人気だったプロ野球も視聴率が低迷している。ドラマはロケ費や俳優のギャラがかさみ、スポーツは放映権が高いわりに視聴率が取れず、採算が厳しくなっているのだ。
「NEWS23」終了でおびえるTBS報道局
業績不振に苦しむ民放各局は視聴率のテコ入れに向け、今年4月から番組の大改編に乗り出す。