日本人にわからない「米朝中」の奇妙な三角関係 ミサイル発射に関税措置がまた始まった

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しかし政治記者とのインタビューで、2回目のミサイル発射実験後に金に裏切られたと感じたかどうか追及されたトランプ大統領は、どちらかというと明るい口調で「あれは短距離(ミサイル)で、信頼を損なうものだとはまったく考えていない」と語った。

今のところ、トランプ大統領はまだ、朝鮮半島の平和維持を担ったことが自らの政治的優位性だと考えているようだ。だが、金委員長に騙されるようなことになれば、また北朝鮮に対する「炎と怒り」を再び声にする危険もつねにある。2度目の首脳会談と同じように、金委員長がトランプ大統領の考えを読み違え、やりすぎる危険がある、というのが外交問題評議会の専門家であるスナイダー氏の見方だ。

「金はアメリカにもう許さないと言われるまで、もしくは年末まで、小さな挑発を続けてくるはずである。このアプローチは危険だ。北朝鮮はかつて『米朝首脳会談でトランプは自暴自棄の取引に出て、北朝鮮の条件をのむだろう』と読んで大外しするという、情報活動上の失態をさらしている。

このお粗末さでいくと、『これ以上やるとトランプから恐ろしい反応をくらう。来年の大統領選挙にむけて北朝鮮への勝利を叫ばれてしまう』というギリギリの線をも、北朝鮮は見誤ってしまうのではないだろうか」

最も重要なカギを握る中国

交渉再開は可能だと専門家たちは信じている。しかし、それには金委員長が、「2016年以降に課されたすべての制裁の撤廃」という希望を“縮小”しなければならない。そしてトランプ大統領のほうも、非核化が少なくとも最初はごく限定的にしか実施されないということを受け入れる必要がある。

これについてロエイリグ氏は、「双方が当初の提案に変更を加えられるかどうかはまだわからない。そもそも『北朝鮮は本当に非核化する気があるのか』という根本的な問題にすら答は出ていないのである。私は大方の意見同様、北朝鮮にその気はないと見ているが、それでも可能性を求めて慎重かつ断固とした交渉の努力をする価値はあると考える」と話す。

しかしその努力がなされている間も金政権は、経済的圧力を和らげようと、また目に見えないレッドラインを越えない範囲で緊張を高めようとし続けるだろう。ここで最も重要なカギを握るのが、これまでほとんど登場してこなかった中国だ。

目下、アメリカとの貿易戦争が再燃している中国だが、米中協議が決裂した場合、対朝圧力にも変化が出る可能性はあるのだろうか。

多くの専門家は、中国の指導部が北朝鮮経由でトランプ大統領に対して報復することはないと信じているものの、今のところアメリカに協力する動機もあまりない。それでも中国は北朝鮮のアメリカへの挑発がエスカレートしているのを半ば見て見ぬふりをしてまで、北朝鮮に交渉への復帰を促している。厳しい交渉、衝突の脅威に明け暮れた2017年の状態には戻りたくないのだ。

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