日本人にわからない「米朝中」の奇妙な三角関係 ミサイル発射に関税措置がまた始まった

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金委員長は北朝鮮最高人民会議で演説し、年末を期限に3回目の米朝首脳会談に向けた交渉条件を定めた。このようにトランプ大統領との個人的な対話の機会は維持しながら、北朝鮮は国務長官のマイク・ポンペオと国家安全保障問題担当大統領補佐官のジョン・ボルトンなどの大統領顧問たちを非難するプロパガンダを展開してきたのである。

アメリカ海軍大学の国家安全保障担当教授でアジア太平洋地域の研究所長のテレンス・ロエイリグ氏は、「私は北朝鮮の最近の行動のほとんどをハッタリか、単なる交渉術として捉えている」と話す。

金正恩はあせっている

「金は最重要課題である制裁緩和はじめ、多くの譲歩をアメリカから引き出すべく、トランプとの会談を早くやるに越したことはないとみて急いでいる。金がネゴをやるにはポンペオとボルトンを避けてトランプと直接交渉するのがベストなのだが、アメリカの選挙が近づくにつれ時間も刻々と過ぎていく。

年頭には、金がアメリカにアプローチの見直しを迫った期限も明けているわだが、トランプ政権は選挙にかかりっきりで朝鮮どころじゃない。あげく2020年の選挙でトランプが負けでもしたら、ホワイトハウスに金の友人はいないことになり、これまでの努力がパーだ。金とっては最悪な展開だろう」(ロエイリグ氏)

金委員長は朝鮮人民の受け取り方も考えている。2度目の首脳会談の交渉責任者たちの粛清で証明されたように、北朝鮮内に不和があることは明らかだし、独裁国家・北朝鮮といえども、制裁が解除されたら生活も上向くはずと信じたすえに望みを断ち切られた人心には、注意を向けなればならない。

金委員長は韓国でも政治工作に余念がなく、文在寅政権にアメリカの制約から抜け出すよう働きかけている。その文大統領は人道援助の名の下に北朝鮮に大規模な食糧支援を行う準備を整えているように思われるが、これが実施されれば金委員長の抱える問題もいくらか軽減されることになるだろう。

今のところ、トランプ大統領との交渉窓口を維持するという金委員長の努力は成功している。最初の一連のミサイル実験を受けてトランプ大統領は激しいいらだちを見せ、記者団に「こんな無茶やって誰が喜ぶんだって話だが、慎重に観察中なのでいずれ何かしらわかるだろう。あちらが交渉したがっているのはわかっている。交渉について話もしてきている。だが、向こうは交渉の準備なんてできていないんじゃないか」と語った。そして「そのあたりは、中国とまったく同じだね」と付け加えた。

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