英のEU離脱、北アイルランド特別扱いしかない 慶応大の白井さゆり・元日銀審議委員に聞く

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――再度の国民投票が行われる可能性については?

可能性は否定しないが、国民投票をやり直しても解決しない。メイ首相が離脱案を出している以上、単純な離脱か残留かでは問えない。(今年3月末に議会でいくつかの離脱に関する選択肢を採決したが、そうした)複数の離脱の選択肢を列挙して国民投票したとしても、国民には理解できず、混乱するだけだ。過半数をとれない結果となったらどうするのか。

――EU側の本音はどうでしょうか。

昨年秋にEUの欧州委員会に出向き幹部と議論したときは、彼らはかなり冷静で、「出ていくのなら、さっさと出ていけば」といった考え方だった。EUへの影響は軽微という見方だった。

ただ、最近は当時と比べてEU経済が低迷し、主導役のドイツ経済も相当落ち込んでいる。世界経済の減速に加え、ブレグジットの打撃がドイツなどの製造業に出ている。自動車や医薬品などでイギリスはドイツなどとのサプライチェーンに組み込まれており、再構築するのも大変だからだ。そのため、経済への短期的影響が大きい「合意なき離脱」だけはEUとしても避けたいと考えている。

欧州議会選が日本企業の決断も左右する

――イギリスには1000社を超える日本企業が進出しています。

まずは5月23日からの欧州議会選の結果を見るべきだ。離脱派が勝った場合や、離脱派と残留派が僅差で不確実性が高まる場合は、日本企業は覚悟を決めてサプライチェーンを見直すべきだ。市場の大きいEUが大事ならば、コストがかかっても生産拠点をイギリスからEUへ分散させたほうがいい。

離脱後のイギリスとEUとの通商交渉が何年かかるかは定かではなく、たとえ関税率がゼロとなっても「原産地証明」が必要になるなど、これまでと同じではない。

EU離脱が決定的になれば、イギリスからEUに本格的に資産や人員を移転させる金融機関も増えるであろう。これまでのイギリスとEUの経済関係の深さを考えれば、新たな経済体制を構築するまでの5~10年程度の間、イギリスはかなり大きな打撃を受けることになるだろう。

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