半導体を覆う底なし不況、巨額赤字で動き出す業界大再編の行方
半導体不況は底なしの様相を呈している。2007年は供給過剰となったDRAMやフラッシュメモリの価格が急落。続く08年は北京五輪特需の剥落と金融危機で、デジタル家電向けが急減した。安定収益源だった車載電装品向けも「ドタキャンが常態化」(半導体商社)。八方ふさがりの中、日本の半導体メーカーは相次ぎ巨額赤字に陥っている。
そして09年に入っても見通しが立たない。「01年のITバブル崩壊時は需要量が底堅く、何年後に供給量の過剰が解消するかを計算できた。だが今回は需要がどれほど減少するのか見当もつかない」(半導体製造装置役員)と嘆く声が聞こえてくる。
展望を失った日本勢 事業売却や工場閉鎖も
そもそも日本勢は調達した部品を組み立て加工するより、需要に即して複雑に品質を作り込む「すり合わせ型」が得意とされる。しかし需要の先行きが見えにくくなると、途端に事業の展望が描けなくなる。このため半導体産業では、事業や工場の売却・閉鎖が相次ぐ(下表参照)。
たとえばOKI。「もともと半導体事業はNTT向けで開始し、DRAMも電話交換機向け需要があったため手掛けた。だが需要先の確保が大変になった」(篠塚勝正社長)と、08年にロームへ事業を売却した。
富士通も頭を悩ませる。「80年代初頭に成長を牽引したのは半導体。社内外で汎用コンピュータ向けの需要が旺盛だった」(富士通の野副州旦社長)。だが半導体事業は昨年3月に富士通マイクロエレクトロニクスへ分離しており、「半導体事業が必要かどうかは内製化すべき半導体の量による」(野副社長)。他社への事業売却や資本提携も示唆する。
需要減退は工場閉鎖も招く。三洋電機はパナソニックとの資本提携を発表した場で、「半導体などの構造改革は三洋電機として実施する」(三洋電機の佐野精一郎社長)とした。構造改革に着手し、海外工場などが閉鎖される方針だ。
各社に厳しい風が吹き付ける中、ひとり気を吐くのがパナソニック。大坪文雄社長は「自社の半導体技術で消費電力量を削減し、商品力を向上できた」と胸を張る。その姿は需要の先行き不安に悩む企業とは対極的。社内需要の威力を示す光景だ。