半導体を覆う底なし不況、巨額赤字で動き出す業界大再編の行方
東芝やエルピーダは“逆張り”戦略で勝負
一方、需要下降局面で東芝は“逆張り”戦略に打って出た。
08年5月、韓国サムスン電子は米国サンディスクへ買収提案を行った。交渉が長引く中、10月に東芝はNAND型フラッシュメモリを製造する四日市工場の装置の持ち分の一部を、パートナーのサンディスクから買い取ることで合意(取引総額10億ドル)。これが奏功してサムスンの買収を阻止したかに見えたが「独占禁止政策の問題でサムスンの買収は成立しないとわかっていた」(東芝の西田厚聰社長)。サンディスクから持ち分を買うのは、あくまでも支援が目的と強調する。
そして今度は、富士通のハードディスク駆動装置(HDD)事業買収に向け交渉中だ。米国ウエスタンデジタルも昨年、富士通のHDD事業の買収を検討したが決裂、現在はサンディスクのソリッド・ステート・ドライブ(SSD)事業買収に目を向ける。NAND型フラッシュメモリの応用製品と期待されるSSDは、東芝にとっても戦略分野である。富士通のHDD事業も買収することで、サーバー向けとパソコン向けの記憶装置で、HDDとSSDの両面作戦を描く。
日立製作所も深謀遠慮をめぐらせる。1月14日に日立国際電気と日立工機の子会社化を公表したが、主目的は「半導体の要素技術を囲い込むグループ再編の一環」(日立)。ただし、日立と三菱電機の合弁会社でデジタル家電向け半導体を扱うルネサステクノロジは対象外。09年3月期は2000億円程度の最終赤字が見込まれており、連結子会社化は負担が重過ぎると判断した。
そして日の丸DRAMを掲げるエルピーダメモリも動き出した。昨年11月、台湾の力晶半導体と合弁の瑞晶電子の株式を買い増して子会社化すると公表。さらに合弁相手の力晶半導体とも「相互に株式を持ち合い一体化も」(エルピーダの坂本幸雄社長)という。
力晶半導体の黄崇仁会長は「半導体産業は政府支援を最小限としてきたが、金融危機で苦しい今こそ政策の出番」と語る。台湾政府が支援へ動けば、瑞晶電子や力晶半導体と緊密化するエルピーダも恩恵を享受する。苦しい状況下、エルピーダの“逆張り”は、台湾政府からの間接的支援を引き出す策となる。
生き残りをかけた各社の逆張り戦略の、真価が問われる。
(石井洋平 =週刊東洋経済)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら