帰国子女はどう生きるべきですか? 【キャリア相談 Vol. 25】

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なぜ、こんな細かいことやニュアンスを気にするかと言えば、メインの思考を司る言語がしっかりしていなければ、深く考えることができないからです。質問者の方は母国語が英語なのかもしれませんが、もしも日本語であれば母国語を大切に扱いましょう。「帰国子女だから日本語(母国語)が少しおかしくて」と言う人に、マザーマーケット(日本)で丁寧な仕事はできませんし、複雑なビジネススキームに関する議事録も任せられません。

その昔は帰国子女のほうが、親が海外で正しい日本語を教えようとするので、日本語がきれいなこともありました。日本の難関高校の生徒がアイビーリーグを目指すのが最先端とされるような現在からは隔世の感がありますが、筆者がニューヨークにいた1980年代は、日本の教育が世界で1番、英語なんかよりも日本に帰ってから授業についていけるように頑張らないと、というのが一般的な海外駐在員の親たちの発想でした。時代は変わるものです。

質問者の方はせっかく自然に英語ができるのであれば、美しい日本語ができるともっとすてきです。なおかつ、日本人の多くがコストを払っている英語がもうすでにできるのであれば、ほかのことに時間が使えます。たとえば頭が柔軟な今のうちに、中国語でもC言語でも勉強すればよいでしょう。ビジネスシーンで日英中Cが使えるとかなり食べていけます。

本はこの世で最も投資対効果が高い

学生時代に何をすればよいか?ですが、筆者が回答してよいかは疑問です。筆者の学生時代は授業にも出ず舞台美術で大工などをやっていましたので、周りがきれいな格好をしている中、ペンキのついたパーカのポケットにはおがくずが入っており、ジーンズには場ミリ(舞台の配置決め)で使ったガムテープや蓄光テープが張ってあったりしました。

大学の教室には民放のアナウンサーになった女性などもいましたが、世界が違い過ぎて汚い自分がちょっと恥ずかしかったマイスイートトラウマがあります。そんな筆者でしたので、成績も悪かったですし、就活に役立つようなスキルアップもできませんでした。

筆者の学生時代はお財布に数百円しかないのも普通で、電車にも乗れないときは路上で寝ていました。学生時代はおカネがなくても、時間だけはあると思いますので、ぜひ、世界の古典や名著に挑戦してください。世の中には図書館というものがあるそうですし、アマゾンでは古本が1円から買えます。本はこの世で最も費用対効果がいいものです。誰かが人生を懸けて書いたものを数百円で読めたりするわけですから。

社会に出てから、『存在と時間』を読む時間はないですし、『論理哲学論考』について論考するのは通勤電車の中ではきついものです。こうした大作は時間があるときにしか挑戦できません。『神曲』と聞いてアイドルの楽曲を思い出すのもいいですが、ダンテも思い出してほしいところです。

大作ではないですが、中原中也をかばんに入れたり、小津や黒澤を見たり、永遠とフェリーニやジャームッシュを見たりできるのも、学生のときくらいです。社会に出た後に失われた時を求めるのは容易ではありません。気がつくと筆者のようなおっさんに変身してリンゴ(のマークのついたデバイス)が体からぽとりと落ちるのです。

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