奇想天外な映画が「旅は人生を変える」を教える 「スマホで書いた」フランスの人気小説映画化

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なんとか翌日のデートの約束を取り付けたアジャ。だが、その夜、泊まるところがなかったアジャは、店の中のクローゼットの中で夜を明かした……はずが、そのクローゼットはイギリスのロンドンへと発送されてしまう。そこからアジャの奇想天外な旅が始まる。そしてマリーとの恋の行方は――。

世界を旅する一方で、さまざまな出会いや恋の行方にも注目 ©2018 Copyright BRIO FILMS-SCOPE PICTURES-LITTLR RED CAR-TF1 AUDIOVISUELS-SONY PICTURES ENTERTAINMENT FRANCE All rights reserved. Brio Films @Sébastien Bossi

原作は、フランス人作家のロマン・プエルトラス。「人生は片道切符1枚」と聞かされた彼は、いろいろなことを経験する人生を送ろうと決意した。フランスやスペイン、イギリスなどを行き来しながら、作曲家、語学教師、客室乗務員、ディスクジョッキー、サーカスの手品師、スロットマシーンの修理屋、航空管制官などに従事した。

これらの豊富な人生経験が、作家活動における糧になったのは間違いない。また、本作の原作となる『IKEAのタンスに閉じこめられたサドゥーの奇想天外な旅』は、国境警察本部の警部補として働いていたときにスマートフォンで執筆。それがフランスで大ベストセラーとなり、全世界30カ国に翻訳権が売れた。そして今回、映画化も果たし、その脚本も原作者自身が参加している。

本作のメガホンをとったケン・スコット監督は、2011年の公開作品『人生ブラボー!』で一躍有名になった。過去に精子提供を行った結果、533人の子供たちの父親であることが明らかになったグータラ男が、やがて父性に目覚めるようになるさまを描き出している。破天荒な設定でありながらも、ハートウォーミングな後味が特徴の同作は世界中で愛され、自身の手でハリウッドリメイクも実現した。

世界15カ国の実力派キャストが集結

本作でも、そんなコミカルな中に垣間見えるハートウォーミングなテイストは健在だ。また、物語中に、インド・ボリウッドの伝統的ダンスや、ミュージカル的なシーンが挿入されるなど、現実とファンタジーをうまい具合にミックスさせた語り口は、観客を物語の世界へと誘ってくれる。

主演はインド映画界期待の星、ダヌーシュ ©2018 Copyright BRIO FILMS-SCOPE PICTURES-LITTLR RED CAR-TF1 AUDIOVISUELS-SONY PICTURES ENTERTAINMENT FRANCE All rights reserved. Brio Films @Sébastien Bossi

主人公のアジャを演じるのは、インド国内で公開された40本以上の映画に出演するインド映画界期待の星・ダヌーシュで、監督、歌手、プロデューサーとしても活躍するなど、幅広い才能を見せつけている。ちなみに彼は、日本でもインド映画ブームを巻き起こした大ヒット作『ムトゥ 踊るマハラジャ』で主役を務め、「スーパースター」と呼ばれるラジニカーントの娘・アリシュワリヤー・ラジニカーントと結婚している。インドではラジニカーントファミリーの一員としても知られている。

ダヌーシュは、どんな状況にもしっかりと向き合って、前向きにチャーミングに生きていく主人公に魅せられたといい、「すばらしいメッセージをユーモアたっぷりに伝えている脚本だった。僕のキャリアにとっても、これまでないほどの将来を約束してくれる作品なんだ」と語っている。

また、世界各国を旅してまわる作品ということで、『アーティスト』で第84回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたベレニス・ベジョや、メル・ギブソン主演作『ブラッド・ファーザー』に出演したエリン・モリアーティ、『キャプテン・フィリップス』で第86回アカデミー賞助演男優賞にノミネートされたバーカッド・アブディなど世界15カ国の実力派キャストが集結。国際色豊かな本作を彩っている。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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