そもそもタイトルからして『きのう何食べた?』『俺のスカート、どこ行った?』『腐女子、うっかりゲイに告る。』とコミカルで親しみやすく、このあたりにも、「ゲイドラマ」ということで間口が狭くならないようにしようという、制作側の意図が見える(ただし『きのう何食べた?』は漫画原作のタイトルどおり)。
また、ここ数年の「LGBT」という言葉・概念の浸透も、こういったドラマの普及に大きく加勢していそうだ。電通ダイバーシティ・ラボによる2018年10月の調査によると、「LGBT」という言葉の浸透率は68.5%に上ったという。
この背景には、いわゆる「オネエタレント」の台頭や、直近では、先の『おっさんずラブ』に加えて、映画『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットも関係しているだろう(余談だが、『腐女子、うっかりゲイに告る。』には、毎回クイーンの曲が引用される)。
女性たちの「眼福」需要を満たしている
加えて、最も直接的要因は、女性層の「眼福」需要ではないかと私は考察する。
「眼福」(がんぷく)とは、ネット上でよく使われる言葉で、美しい男性(女性)を見たときの多幸感を表現する定番ワードだ。とくに女性層が美男子を見たときに使われることが多い。
『おっさんずラブ』の田中圭や、『きのう何食べた?』の西島秀俊(の料理シーン)、『腐女子、うっかりゲイに告る。』の金子大地(の陰鬱な表情)に「眼福」を感じた女性層が、これらのドラマの人気を直接的に支えていると考えるのだ。
ここでポイントなのは、その「眼福」の共有はネットに向かうという点である。
『腐女子、うっかりゲイに告る。』の初回で、主人公の三浦紗枝(藤野涼子、好演)が、BL(ボーイズラブ)にハマっていることを周囲にひた隠しにしたように、ゲイを題材にしたドラマへの「眼福」もまだ少し、周囲に公言しにくい感じがあると思う。
そこで、その「ゲイドラマ眼福」共有欲求は、半匿名のネットメディアに向かう。『おっさんずラブ』のネットを通じた爆発的人気にも、そんな背景があったはずだし、「ゲイドラマ眼福」は今後も、ネットの中で熱く激しく語られ、それがさらに「ゲイドラマ」の普及を拡大していくと見るのだ。
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