あるカリスマ数学教師の「変態」を育てる授業

「どうせできない…」の壁を越えさせる名人技

「1人ができるとみんなできるようになるよね。なんでかわかる?」

「できると思うから!」

「そうだ!」

数学でも、気持ちが大きく作用するということだ。

「7ができた人はもっと短くできないか考えてみて」

「できるわけないじゃん。展開図つくれないんだから……」

「あるいは、こっちの問題をやってくれてもいい」

黒板に1辺が「3」の正方形を描く。

「『3×3』の正方形から1辺が『1』の立方体をつくって。これは切り込みを入れてもいい。でも切り離しちゃダメ。この問題は、このまえ数学甲子園で優勝したチームの1人の高2の○○先輩が考えてくれたの」

3〜4分で「3×3」の問題を解く生徒が現れる。一番乗りの生徒にどうやって解いたのかを聞いてみると、最初から論理的に考えたわけではなく、まずは何となくの感覚で切り込みを入れてみたらしい。まさに試行錯誤である。

続いて数人がそれぞれの方法でクリアした。やはり1人ができるとそれに続くのである。

授業時間は残り3分。

「はい、耳貸してください。いくつか気づいたほうがいいことがある。まず頭のなかで考えて『8』でできるとわかったけれど、必ず実際にやってみて確かめたほうがいい。もう1つ。『7』じゃ無理だろと思ってたけど、何人かがつくったら一気にみんなできるようになったじゃん。これはとても大事なことで。初めてやることって難しいのよ。

なんでかって言ったら、それが本当にできるかどうかわからない状態でやらなきゃいけないから。それでだいたい自分で自分にストッパーをかけちゃうの。『できないんじゃない?』みたいに。だからできない。でもそういうことを考えないでひたすらやれるかどうかが、新しい方法を見つけられるかどうかにつながるんだ。そして実際に見つけたのが、○○であり、△△であり……。やっぱり共通するのは『変態』だわ!」

イモニイ語録の「変態」は「褒め言葉」

「変態」のひと言で、教室は大盛り上がり。もちろんイモニイ語録では「褒め言葉」だとみんなが知っている。

「新しいことを発見するためには、『変である』ってことがホントに大事なんだ。実はもう1つ言うと、キミらがよかったのは……。折り込みなしでやるのがきれいだなとか、あるいは渦巻き型にきれいに切り込みを入れてできるようにしたいなとか、自分なりのこだわりをもって追求したよね。自分の中で問いを立てることはすごく大事です。そこで1つ言います。実は、B組の□□が、切り込みを1カ所一直線に入れるだけで完成させました」

「え〜!」

「みんなもできると思うよ。なぜなら、もうみんな、できるって知ってるから。切り込みをまったく入れないでできるかどうかはオレにもわからないから、誰か『変態』になって考えて」

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