ヤマ発、人気薄の「ボート・バイク」復活への秘策 ファン拡大に向けレッスンなどあの手この手
4月中旬、晴れた東京湾を1艘約3500万円のレジャーボート「SR330」が、切れのよいエンジン音をたて、水しぶきを上げながらすべっていく。時速50キロメートルでレインボーブリッジの下をくぐりぬけるのは、爽快かつスリル満点だ。
「東京湾なら釣りができるし、横浜港でのクルーズも楽しめる。花火大会の日には、毎年予約で一杯になりますよ」。そう話すのは、ヤマハ発動機から派遣された船長だ。
実は収益柱のレジャーボート
大手バイクメーカーとして知られるヤマ発で、2輪車事業に次ぐ事業規模を誇るのがボートや船外エンジンなどのマリン事業だ。売上高に占める比率は、2輪車事業が6割であるのに対し、マリン事業は2割。ただ実は、営業利益では2輪車事業の544億円を上回る637億円を稼ぎ出す、収益の大黒柱である(2018年12月期)。
マリン事業はアメリカが主戦場で、国内の売上高は279億円と事業全体の8%に過ぎない。マリン事業本部長の臼井博文上席執行役員は、日本の人口当たりのプレジャーボート保有台数は、アメリカの20分の1ほどしかないと明かす。しかも、国内市場は右肩下がり。2017年度のプレジャーボートの国内保有数は23万5000隻、2000年から46%も減っている。操船に必要な小型船舶操縦免許の年間取得者数は1998年の9万7000人から5万7000人に減少している。
こうした市場環境では、SR330のような高級ボートは当然として、中級以下のボートであっても係留やメンテナンスの費用まで考えると購入の敷居は高い。そうした中でヤマ発が力を入れているのがボートのレンタルサービスだ。会員制度を立ち上げたのは1996年。その後、内容を充実させながら、少しずつ会員を増やしてきた。
免許保有者が対象の「シースタイル」は入会金2万1600円、月会費3240円で全国140カ所のマリーナに用意されたさまざまなボートを利用することができ、現在2万3400人が登録している。船舶免許を持たない人向けにも「シースタイルライト」を用意。入会金5400円を払えば、月会費なしに約20カ所のマリーナでボートを船長付きで借りることができる。
「シースタイル」「ライト」ともに、ボート利用料と燃料代が別途かかり、ライトの方が若干利用料は高い。例えば定員5人(船長含む)の「FR−20」で東京湾をサンセットクルーズする場合、ライトの会員のボート利用料はハイシーズン(6〜9月)の平日で3時間1万2100円。船長の手配料やガソリン代を含めても、総額5万円ほどで利用ができる。4人ならば1人約1万2000円と、ボートを使ったマリンレジャーがかなり身近になる。
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