ヤマ発、人気薄の「ボート・バイク」復活への秘策 ファン拡大に向けレッスンなどあの手この手
ヤマ発を生んだ楽器メーカーのヤマハは「ヤマハ音楽教室」を全国で展開している。「ヤマハ中興の祖で、ヤマ発の創業者である川上源一氏の、消費者は自ら開拓していくものだ、という考え方が連綿と受け継がれている」と、二輪車の販売・サービスなどを担うヤマハ発動機販売の宮本義信氏は語る。楽器もボートも、少なくとも日本市場では何もしないで売れていくものではない。体験する場所を自ら提供することで市場を開拓するという思いが強いという。
それは看板事業であるニ輪車でも同じだ。ヤマハライディングアカデミー(YRA)という名称で、バイクのペーパードライバーや、リターンライダーを対象にした「大人のバイクレッスン」や小学生にミニバイクを体験してもらう「親子バイク教室」を展開する。
深刻なニ輪市場の縮小
3月末、東京サマーランドで開催された「大人のバイクレッスン」には、20人ほどの受講生が参加。その大半は「バイクに乗るのは20年ぶり」といったリターンライダーだ。中には「免許を取ったが公道では一度も走っていない」という若いライダーもいた。久しぶりのバイクに緊張している受講生たちも、インストラクターが7人もついて、バイクへのまたがり方から発進の仕方まで、懇切丁寧に指導してくれるので、少しずつ笑顔が見られるようになった。
レッスンの最後には、町中のツーリングに挑戦した。自分でも安全に乗れる、という自信を得るとともに、バイクの魅力を再発見したようだ。受講生には卒業証代わりにヤマハのレンタルバイクの割引クーポンが手渡される。まずはバイクに親しんでもらい、ゆくゆくはヤマハのバイクを購買してもらうことが目的だ。1日の受講料は8000円(昼食付き)。バイクやヘルメット、グローブなどを借りられる。受講者にとってはうれしい限りだが、短期的な採算は度外視であることは想像に難くない。
国内のニ輪市場の縮小は深刻だ。2018年の国内二輪車の出荷台数は33万5000台。これは10年前の3分の1、30年前の9分の1に落ち込んでいる。平均購入年齢は年々上昇、ついに45.8歳となった。ヤマ発だけでなく、各メーカーがこうしたレッスンを開催。自動車工業会のような業界団体でもバイクのイベントを開催しているが、“焼け石に水”というのが現実だ。
特に若年層のバイク人口増加は容易ではない。免許取得やバイクの購入・維持費用が高いのはボートと似た環境である。二輪の場合、安全面への懸念も根強いものがある。ヤマ発の二輪車事業の売上のうち国内が占めるのは4%しかない。それでも、母国市場の衰退を、指をくわえて見ているという選択肢はない。今年は女性や若者(平成生まれ)の限定レッスンも設定している。ちょっとしたきっかけを作り、知らなかった魅力に気づいてもらおうという、ヤマ発の取組みは実るのか。
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