慶応OB「三田会」やっぱり強すぎる結束の実像 日本最強の母校愛、早稲田OBは到底かなわない

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「慶応の本流は幼稚舎上がり」。ある普通部出身者はこう語る。

小学校に当たる幼稚舎から普通部に進み、塾高から大学へ。これが慶応の“正統派”とされ、「それ以外は本物の慶応ボーイとはいえない」。実際に中高でも、小学校から培った友人関係を軸に、「クラスで中心となるのは幼稚舎出身者が多い」。

長谷山彰・慶応義塾長も「(卒業生の同窓意識が強いのは)一貫校の存在がある。どこかの一貫校に1回入ったら大学まで進学するという形は他校にはない。大学学部生の2割が一貫校出身で、学部によっては4割近くに上り、塾風を形作るという意味でかなり大きい」と認める。

慶応卒という名の下に三田会で集えば、強力なネットワークができる。そのため、今や企業や業界に三田会が誕生。三田会に入れば普段話せない役員や部長、上司と話せる機会も得られるなど、慶応卒ならではの『御利益』を感じられる点が、三田会を強固にし、慶応ムラの活動を活発にする。

(出所)『週刊東洋経済』5月11日号

早稲田大を卒業後に慶応大で博士号を取得、早稲田と慶応の両校で教えた経験のある山根節・慶応大学名誉教授は次のように言う。

「慶応出身」と言うだけでつながりが自然とできる

「慶応の教員となってから、地方に講演で訪れると驚いた。講演が終わると、参加者が集まってくる。聞くと『慶応出身です』と。話を続けていると、『次こちらに来るときは、ぜひうちのお店で食事してください』などと言われ、各地の経営者とのつながりが自然とできてしまう。ビジネスは人脈で成り立っている限り、ウィンウィンの関係を作りやすい三田会活動に参加することは、ビジネスパーソンとして利点は大きいだろう」

広がる三田会の活動は、ライバル早稲田にも広がる。早稲田大には慶応出身の教員からなる「早稲田三田会」があるほどだ。2001年に同会を立ち上げた早稲田大学先進理工学部の武田京三郎教授(慶応志木高出身)は、「今でも塾歌を聞いて塾旗が揚がる場面では胸が熱くなります」と語る。設立時には敵地である早大の大隈会館で、塾歌が鳴り響いた。

慶応の創設者である福澤諭吉は1879年の新年発会で、「慶応義塾の今日に至りし由縁は、時運の然らしむるものとは雖(いへ)ども、之(これ)を要するに社中の協力と云(い)はざるを得ず。其(その)協力とは何ぞや。相助(あいたすく)ることなり」と発言、「社中協力」という言葉を唱えた。「慶応義塾に学んだものはともに協力せよ」という福澤先生の教えを、三田会はまさに地で行く組織である。

人生の節目で接点を作り、慶応愛を醸成する。その仕組みの巧みさこそ、慶応三田会の結束力の源である。

『週刊東洋経済』5月11日号(5月7日発売)の特集は、「最強私学はどっちだ? 早稲田vs慶応」です。
林 哲矢 東洋経済 記者

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はやし てつや / Tetsuya Hayashi

日本経済新聞の記者を経て、ハーバード大学(ケネディスクール)で修士号。『週刊東洋経済』副編集長の後、『米国会社四季報』編集長。

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