「数としてはインネパ店のほうが圧倒的に多く、今現在も増え続けています。もともとネパール人は、インド人より人件費が安いうえ真面目で素直な人が多いということで、1970~1980年頃から日本のインド料理店でよく雇われていました。そして1990年代以降、彼らが独立してインド料理店を始めたのが、インネパ店の起こりといわれます。
お店が1店あると、従業員として地元のネパール人を日本に数人呼べるので、ネパール人がたくさん来日しました。さらにそこから独立する人も出て、インネパ店はどんどん増加。それにより、20年ほど前はインド料理店といえば1駅に1店くらいしかありませんでしたが、今や4~5店あることも普通になっています」(小林氏)
インネパ店の急増は、日本で確立されたインド料理のフォーマットを、より進化させることになる。前述の稲田氏はこう話す。
「日本人が喜ぶものをということで、ナンはどんどん大きく、甘く、ふかふかになっていきました。また、意外と気づきにくいところで大きかったのが、カレーのグレービー(汁気)の分量です。以前はグレービーと具の分量はおおよそ半々だったのが、グレービーが多いカレーに慣れ親しんだ日本人のニーズに応え、今やグレービー8・具2くらいの割合になっています。
ほかにも、以前はあったインドの前菜は生野菜サラダに変わり、さらに近年はそれを生春巻きに変える店もあります。こうして日本人が好みそうなものを徹底的に追求することで、他国のインド料理にはまずない、日本ならではのスタイルが生まれました」
こうした流れは、インド料理に対するネパール人とインド人のスタンスの違いが大きく関係していると小林氏は言う。
「インド人の方々もさまざまな工夫をされていますが、やっぱりインド人にとってのインド料理は、物心ついた時から慣れ親しんでいるもので、『こうあるべきもの』というこだわりや思い入れが強くある。対してネパール人にとってのインド料理は、決して子どもの頃から食べてきたものではありません。だからこそ固定概念にとらわれず、柔軟にアレンジしていけるのだと思います」
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