トランプの「欧州嫌い」はここまで深刻だった

揺れる米欧関係、試される日本の戦略的外交

アメリカの自己中心的対応が吹き荒れた結果、コミュニケでは「イスラエルとパレスチナの間の紛争について意見交換を行ったが、明らかな相違がみられた」などというこれまでにない表現が盛り込まれた。また「国際法」という言葉が消えて「国際的なルール」などに置き換えられている。

世界のルールは自分が作るという自負心の強いアメリカは、伝統的に自国の主権に制約がかけられる国際法や国際的合意を嫌う。アメリカの利益を最優先し、それに合わない国際的な合意は軽視、あるいは無視することはトランプ大統領が初めてではない。とはいえ、ここまで徹底して細部にわたって欧州各国を相手に文言や表現にこだわり、自分の主張を貫いた例は過去にあまりない。それだけトランプ政権の「反欧州」の空気が強いことを表している。会議には河野外相も出席していたが、米欧間の激しい応酬の前には脇役でしかない。

第2次世界大戦後の米欧関係は自由、民主主義、市場経済などという政治経済社会の枠組みや価値観を共有し、戦後の復興と著しい経済発展を実現してきた。また東西冷戦のもとで北大西洋条約機構(NATO)という安全保障の枠組みを構築し、ソ連に向き合ってきた。その結果、歴史上、最も成功した同盟関係ともいわれてきたほど安定感のある関係だった。

過去と次元の異なる「米欧対立」

もちろん長い歴史の中には、自主独立路線を主張するフランスのドゴール大統領がNATO離脱宣言を打ち出したこともあった。アメリカのレーガン大統領が欧州に何の相談もなく戦略防衛構想(SDI)を表明し、フランスなどが強く反発したこともあった。また、NATO加盟国の国防予算が少なすぎるという不満は、アメリカから何度も突き付けられてきたが、積極的に対応した国はほとんどなかった。

しかし、米欧がどれほど対立しようとも、アメリカと英仏独など欧州の主要国は、戦後の世界秩序を創り上げ、維持・発展させてきたという自負と責任感を持っていた。ゆえに決定的な対立を回避するという知恵も併せて持っていた。

ところが今回の米欧対立はこれまでとは根本的に異なっている。トランプ大統領という特異な人物の登場がこれまでとは次元の違う米欧対立を生み出したことは否定できない。トランプ氏は、自由貿易などこれまでの繁栄をもたらした秩序の維持について一顧だにせずアメリカの利益追求にこだわり、既存の秩序を破壊しようとしている。

しかし、トランプ大統領だけが今の危機を生み出したとも言い切れない。欧州の側にも原因がある。欧州はかつて持っていた統合力や一体性を失いつつある。そうした変動に向き合う主要国トップの指導力の低下も著しい。混迷を続ける英国のEU離脱やフランスのイエロー・ベスト運動、広範囲に及ぶポピュリズムの拡散は、リーダーの不在と欧州の求心力の低下を物語っている。

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