先進国の子も「労働力」にするコワい教育の歴史

アップルが「画一的な教育」に異を唱えるワケ

しかし、実は1800年代初めのアメリカでは、ほとんどの教育現場ではこのような教え方を実際に行っていたということは意外と知られていない。

ならば、いったい何が起きたのか? なぜ、個々の生徒にパーソナライズ化された学習や授業が100年にわたって途絶えることになったのだろうか?

子どもを労働力にするための教育に変えた人物

問題の出来事は、戦争でも不況でもない。教育の歴史を変えた人物が暗殺されたのでもない。フレデリック・テイラーという1人の男性が、ある考えを思いついたことから始まるのだ。

そのテイラーの得た知見をまとめたのが、1911年に出版された『科学的管理法』という本だ。効率と生産性を最大にしたいという熱意にあふれるテイラーの考え方はアメリカを席巻し、彼の著作は生産現場に最も影響をおよぼした経営指南書の1つとなった。テイラーの考えはあらゆる種類の企業や組織に取り入れられ、多くの業界から「ムダ」(とスキルを持つ労働者)が排除された。それまでの職務は、誰にでもできるような作業に細分化された。

その結果、経営者は専門スキルを持つ労働者に高い賃金を払う必要がなくなった代わりに、スキルを持たない労働者を大量に雇うことが必要となった。

同時に、アメリカにおける労働は、質ではなく量と同義に捉えられるようになった。いかに優れているかはもう大事ではなく、いかに速いかがすべてとなったのだ。

スピードは簡単に定量化できるので、所定の時間内に仕事をこなすことが労働者に課された。科学的管理という理論に後押しされて、どの業界もカスタマイズ化や創造性といった効率性を損なうものには目を向けず、標準化に注目した。

そうした流れから、ヘンリー・フォードのような人々が現れた。フォード・モーターを創設したフォードは、生産ラインとそこで働くスキルの低い労働者を使うことで、自動車の大量生産が可能となる製造の標準化を実現した。標準化を目指すと、個人より組織がつねに優先されることになる。

そんな中で、当時世界一の金持ちで最も有名な実業家といっても過言ではないジョン・D・ロックフェラーは、頭を使わない安い労働力を早くから育てるのがいちばんだと考えた。つまり、子どもの教育を労働力になるための準備に変えればいい。

衝撃なのが、テイラーの著作が出版されたわずか1年後の1912年に登場した論文だ。これが教育のパラダイム転換を起こすことになる。

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