「人が周りに集まる人」が心得ている意外な話術 必ずしも話し上手である必要はない

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一方、自分に、1つでも深く話せるテーマがあれば、それは人が集まる場で「話のカード」になります。前に紹介した「マニアックな自分をさらけ出してみる」というのも、深く話せるカードの1つといっていいでしょう。

ただ、なかには「自分には、それほど深く話せるテーマがない」という人もいるかもしれません。そういう人は少し発想を転換させて、「質より量で語る」分野をつくればいい、と考えてみてください。周囲の人より、「ちょっと多く体験している」だけでも、実は、立派な話のカードになるのです。

「量を体験する仕組み」を作っておくといい

僕も、映画にかけては、周囲の人より多く見ているという自信があります。質という点では、ちょっと自信がない。だから、「年間、100本は見るぞ」と決めているのです。映画業界や、映画評論家の人には歯が立たないだろうけれど、少なくとも自分の周囲に、年に100本も映画を見ている人はなかなかいない――これで、量で語れる話のカードが1枚、増えたことになります。

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話の「質」を高めるにはセンスを磨いたりする必要があるけれど、「量」で語れるようになるには、「これ」と決めたものを体験する機会を増やせばいいだけです。これなら、質を高める努力より、ぐっとハードルが低くなるでしょう。例えば、「ひたすらトンカツを食べる」といったことでもいいと思います。

「僕、この2週間、夕飯は必ずトンカツと決めていたんですよ」

これだけでも十分、面白いし、「700円のトンカツと3000円のトンカツの差って、やっぱり脂のうまさの差だと思うんですよね」なんて話すこともできるでしょう。量を体験することで健康を害しては元も子もないのだけれど……。何であれ、量を多く体験することで、こうした「見識めいたもの」が生まれることも多いのです。

さらに、量で語るために、「量を体験する仕組み」もつくっておくといいでしょう。僕は、「帰り道にある映画館のサービスデーには、残業をしない」と決めています。映画が安く見られる日と残業をせずに早く帰る日を合わせることで、自然と映画館に足が向くようにしているのです。

もちろん、仕事の都合もあるから、毎週、必ず早く帰って映画を見られるとは限りません。それでも、先に仕組みをつくってしまうことで、決意はしたもののなかなか実行できないということが起こりづらくなるのです。

このように、「◯◯の体験の量を増やそう」と決めたら、まず、その体験量が増えるような仕組みをつくってしまう。すると自然と量が積み重なり、「人よりちょっと多く体験している」という種類のカードが1枚、加わるというわけです。

吉田 将英 電通若者研究部(電通ワカモン)研究員、 プロジェクトプロデューサー

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よしだ まさひで / Masahide Yoshida

1985年生まれ。2008年慶應義塾大学卒業後、前職を経て、2012年電通入社。戦略プランナー・営業を経て、現在は経営全般をアイデアで活性化する電通ビジネスデザインスクエアに所属し、さまざまな企業と共同プロジェクトを実施している。また、「電通若者研究部(電通ワカモン)」では、研究員として10代~20代の若者の心理洞察から、共同プロジェクト開発まで幅広く従事。著書に「仕事と人生がうまく回り出すアンテナ力」(三笠書房・2019年)、「なぜ君たちは就活になるとみんな同じようなことばかりしゃべりだすのか」(宣伝会議・2014年)、「若者離れ」(エムディエヌコーポレーション・2016年)

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