駅ビルの「常識」を破るルミネが磨く接客力、店頭販売員こそ価値の源泉《特集・流通大乱》

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 もちろん、ルミネの売り上げを稼いでくれるのが各ショップだ。それゆえ、店員が大切な接客に注力し、売り上げを極大化できるよう、ルミネは全力でサポートする。その制度的な支柱が「フロアマスター制度」。

この制度では、ルミネの社員が20~30店を管轄、納品や検品体制から人員配置に至るまで、各ショップを定期的にヒアリング。ショップ店員が接客に時間を割けないような障害があれば、ルミネ側が各ショップと共同で解決に当たる。たとえば、物流に時間を取られ、接客に人が割けないような場合は、ルミネ側がショップの本部にもっと人員を増やしてほしいと掛け合う。ショップの社長に直接問題提起することも珍しくない。それだけルミネは接客を重視している。

ライバル店同士が接客技術を共に磨き合う

「どんなに優れたブランドでも、目的買いで訪れるお客様は最大3割がいいところ。7割以上は、実は店頭での接客で販売機会が生まれる。ならば、店頭での接客時間を最大限に増やすべき。だが現実はそうなっていない。多くのショップではバイヤーやデザイナー、プランナーといった職種に光が当たりすぎており、店頭の販売員はコストと見なされる。だが、販売員はコストではなく、価値を生み出す源泉。店頭での接客こそが価値を生むということをわかっていただくためにも、オーナーに言い続けている」(花崎社長)。

現場の販売員に少しでも光を当てようと、05年からスタートした制度が「接客ロールプレイングコンテスト」だ。開催は年1回で、全1600のショップが参加。各店での予選会や本大会を経て選出された優秀者は、9月の決勝大会へ勝ち進む。

高い専門知識を持ち、優れた接客技術を持つ販売員を「ルミネスト」として表彰。今年も優勝者から3位までと、特別賞6名の計9人が「ルミネストゴールド」に輝いた。決勝大会に出場した残りの31名はシルバー賞が、店段階での大会で優秀と認められたスタッフ93人にはブロンズ賞がそれぞれ贈られた。

こうした取り組みは、受賞した販売スタッフのモチベーションを上げる。だがそれだけではない。2万9000人の販売スタッフ全体の接客力を底上げしようという仕掛けだ。

驚くのは、大会に向け、各店でショップの垣根を越えた協力が当たり前のように行われることだ。予選会の出場者たちが、歴代の表彰者を招き、仕事の前に共同で「朝練ロールプレイング練習会」を行うのも珍しくない。そこには、ライバル店同士でも積極的に接客の技術を公開し合うことが、互いの売り上げアップにつながるという確信がある。

小売業の力は販売員一人ひとりのヤル気の集積。それをいかに引き出すか。ルミネの成功は、百貨店など、本来の接客に心血を注ぎ、今後の活路を見いださなければならない他業界にも、大いに参考になるはずだ。


(週刊東洋経済)
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