駅ビルの「常識」を破るルミネが磨く接客力、店頭販売員こそ価値の源泉《特集・流通大乱》

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駅ビルの「常識」を破るルミネが磨く接客力、店頭販売員こそ価値の源泉《特集・流通大乱》

1月8日。都内のあるホテルでは、ルミネの賀詞交換会が開かれていた。

同社は東日本旅客鉄道(JR東日本)系の子会社で、新宿駅など首都圏に12店を展開するファッションビル運営の大手。衣料や雑貨専門店を主体とした約800社、1600のショップからの、その売り上げに応じた賃料が主な収入源だ。本社の従業員数は350人足らずだが、これらショップで働く販売員は約2万9000人に上る。

消費者の衣料支出が減少する中、同社は1999年度から9期連続で増収増益。90年代から下降の一途だった売上高は直近で2620億円まで拡大、営業利益も100億円の大台に乗せた。

「ユナイテッドアローズ」など、その日集まった個性派専門店の社長や幹部を前に、花崎淑夫ルミネ社長は今2009年3月期の第3四半期の衣料の売り上げが前年同期比2%増だったことを報告した。通常ならこの未曾有の消費不況の中、2%増は大健闘のはず。だが、花崎社長は満足してはいなかった。

「テナント」は使用禁止 問題解決は共同で当たる

「この数字は私たち自身に問題がある証拠。どんなときでもお客様は必ずいます。この逆風はうぬぼれかけていた私たちに反省を与えてくれる天の啓示。皆さん、今はすべてを見直すいい機会。今こそ本当の独自性を発揮するときです」

それにしても、なぜルミネはこの不況下で大健闘できるのか。駅直結の商業施設だからか。答えはノーだ。むしろ90年代半ばまで駅立地という好条件にあぐらをかいていたことを反省、“駅ビルをやめた”ときから快進撃は始まったと言ってよい。

その流れに拍車をかけたのが、01年に就任した花崎淑夫社長だ。

社員に「駅ビル」という言葉を使うことを禁止。不動産賃貸の延長のような駅ビル業からの決別を宣言。あえて顧客層の中心を20代、30代の働く女性やカップルなどに絞り込み、ファッション鮮度の高い専門店の複合ビルへと変身を図った。

だがこれだけの説明ではまだ不十分。同社の本当の強さは、ルミネと各専門店、さらには約2万9000人の各ショップの販売スタッフがあたかも同じ企業の社員のように、一体性を持った組織として機能しているところだ。

花崎社長は社員に「テナント」という言葉を使うことも禁止した。テナントという言葉を使うと、どうしても上下関係が生まれてしまう。「ショップとは運命共同体。パートナーシップそのものであり、その意識が徹底できるかどうかがすべてだ」。

冒頭の交換会でも、花崎社長に続き壇上に立った衣料専門店「ビームス」の設楽洋社長がこう畳みかけた。

「オーナーの皆さん、元旦から開店の店もあるわけですが、現場に激励に行きましたか。私は差し入れを持って行きましたよ。逆風が吹いているときこそ、社長が自ら舵をとるべきです」

同社はルミネと最も取引が厚い企業の一つだが、一専門店のオーナーが他のオーナーの経営姿勢に気軽にものを言える風通しのよさを、ルミネは作り出している。

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