台湾カリスマ経営者の危なすぎる「政界進出」 米中ハイテク摩擦の最前線、台湾現地報告
「媽祖(まそ)が私に『前へ出ろ』と言ってくれた」
鴻海精密工業の郭台銘(かく・たいめい)董事長は台湾で信仰されている海の女神のお告げがあったと訴え、4月17日に野党である中国国民党(国民党)からの台湾総統選出馬を表明した。
鴻海は日本の電機大手・シャープの親会社にして、世界最大の電子機器製造受託サービス(EMS)企業だ。2018年の売上高は5兆2983億台湾ドル(約19兆1000億円)を誇る。アップルのiPhoneの製造受託で有名だが、アメリカが同盟国に排除を求める中国のファーウェイ製品も製造している。
鴻海は中国に工場を置き、アメリカ企業と中国企業のそれぞれに主要顧客を抱える。激化してきた米中摩擦のさなか、一代で巨大企業を築き上げた郭氏の一挙手一投足が注目されてきた。台湾のエレクトロニクス産業は米中ハイテク摩擦の最前線になっているが、鴻海こそはその象徴だ。
4月22日発売の『週刊東洋経済』の第2特集は「チャイナ・スタンダード」。新たなハイテク覇権国になりつつある中国と、米中ハイテク摩擦の実像をリポートしている。
米中の狭間で政治的に動く
鴻海トップの郭氏は台湾の親中政党である国民党を支援してきた。郭氏自らも中国の習近平国家主席と握手を交わし、「古き友」と呼ばれるなど中国との関係が深い。
中国にとって鴻海と郭氏の利用価値は高い。鴻海は30年以上前から中国に大規模投資を行ってきた。iPhoneの製造工場など生産拠点の8割弱を中国に置き、現地で約100万人を雇用するなど同国の経済に寄与している。
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