門司港駅舎を復原、よみがえった「大正」の風格 レトロな外観だが、中に入ると「スタバ」が
門司港駅舎は木造建築ながら、後年の補強以前からコンコース等の大きな空間を支えるため一部に鉄の梁が入っていた。これも解体時の構造調査や図面照合により建築当初からと明確に判明した。現代のようなH鋼などではなく、鉄板を組み合わせた橋梁技術を用い、部材には八幡製鉄のマークもあった。まさしく鉄道ならでは、そして鉄の街、北九州ならではの大正時代のハイブリッド構造だった。
文化財修理は、こうした解体調査による現実の老朽化の度合や改造履歴を明らかにすることから始まる。そしてその結果から、今後も維持し、まして駅舎としての機能を使い続けてゆくために、どのように修復するか、新たな設計が行われる。着手当時、2018年春完成予定とされていたものが今年、2019年となったのはそのためだ。
当時の姿を残すべき文化財と言っても腐蝕部分は除かねばならず、現代の耐震基準に合わせた補強も求められた。そのため、全体の約3割の木材が交換され、木造の柱や梁に寄り添う形で6カ所の鉄骨フレーム、鋼製の枠、水平ブレース(トラス構造同様の斜材)等が入れられた。鉄骨にかかる荷重を支えるため、地中に鋼製杭も打設された。その一方、地盤調査の結果と軽い木造建築のため、東京駅のような免震構造は採られていない。
スタバ店内に華麗な2階へのエレベーター
にぎわいの中、復原が成った駅舎内を探索した。正面から見て1階左側はみどりの窓口と観光案内所。そこは旧1・2等待合室であり、ワニスで仕上げた羽目板が重厚な雰囲気を出している。カウンターもそれに合わせた造りだ。石膏で縁取った黒しっくいの飾り壁は後年の壁に隠れていた。
出札窓口(使用していない)が復原されたコンコースを挟んだ右側はコーヒー店。人気のスターバックスとあって行列ができていた。そこは旧3等待合室で、羽目板ほか木部は淡い黄色のペンキ塗り。1・2等とは木の材質も異なる、直截に言えば安価な杉のためペンキで塗り隠していたのが真相だ。
このスタバの店舗中にエレベーターがある。古い建築のバリアフリー化のため設置された。そしてその支柱が、じつは前記の補強を兼ねている。店舗内にエレベーターとはいささか奇妙だが、コンコースの上は貴賓室等、左側みどりの窓口内は接客カウンターがあり2階はレストラン厨房。したがって店舗フロアが上下階を貫ける唯一の場所だった。
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