離婚に「2カ月の熟考」が必要なスイスの事情 裁判所に申請が必要、10万円以上の負担も
男女の愛情表現が豊かなお隣フランスと比べて、スイス人たちはさらりとしていて、日本人に似ている。もちろん愛情が薄いわけではなく、一生を共に過ごそうと結婚している人は多いし、入籍はしていないがパートナーと長く暮らしている人も多い。
離婚は身近な出来事
この国で生活し始めたころ、「スイスでは離婚率(結婚全体に対する離婚の割合)が40~50%だ」と友人から聞き、まさか!と耳を疑ったものだったが、10代の子どもを持つ親となり交友関係が広がったいま、それは嘘ではないだろうと実感する。離婚することになりそう、離婚した、パートナーと別れたという話が次々と飛び込んできて、両手の指では数え切れないほどだ。本当に、誇張しているわけではない。
けれども「人口1000人当たりの離婚件数」というもう1つの統計を見ると、過去10年は1000人当たり2~3人で、EU平均は2人、また日本は1.8人前後だから、スイスで離婚者が特に多いというわけではない(世界の離婚率比較)。 ※2種類の離婚率については、こちらの記事参照
スイスでも離婚に至る事情は人それぞれだ。筆者の周囲でいえば、夫や妻以外に愛する人が現れた、性格の不一致、金銭的な面で信頼が崩れたといったことが決め手となっている。
離婚は子どもがいるとどうしても複雑になるし、より労力もかかる。筆者のスイス人の友人Kさんは、スイス人のご主人との関係に数年悩んだ末、最近、離婚を見据えて家を出た。そこから徒歩圏内にアパートを見つけて契約を済ませておいたのだった。小学生の子どもは1週間の半分ずつをKさん宅と自宅とで過ごしている。Kさんから話を聞いたときは寝耳に水だったが、客観的に見てKさんの別居の決断は正しいと思われる。ご主人はいまのところ離婚を望んでいないそうだが、Kさんの意思は揺るがない。