「親の葬式をしなかった」59歳男に一生残る後悔

「葬式不要論」が合理的と断言できない理由

しかし「遺体の処置」のみを葬送儀礼というのであれば、有史以来、世界で弔いの儀式が今日まで続くこともなかったでしょう。そもそも冠婚葬祭などの通過儀礼は、第三者には不合理で非論理的に見えるものです。

田中さんは、Amazonの「お坊さん便」を利用しましたが、合理的な方法であると理解しつつも、これがいいとは正直思えませんでした。僧侶は丁寧で不満はありませんでしたが、今後、法要のたびにAmazonを利用して違う僧侶にお願いするのにも違和感がありました。

「父は自分たちに負担をかけたくないという思いで、葬儀不要、お墓はいらない、と言っていたのかもしれませんが、自分たちに限っていえばコストに反映されない負担の部分が大きかったような気がします」と振り返ります。

「逝く側」「送る側」のギャップをどう埋める

葬儀もお墓も、弔い方は時代とともに変わっていくものですから、形式にとらわれる必要はありません。戦後数十年の動きだけみても、火葬率が上昇し、葬儀の会場は自宅から葬儀専門式場へ移り、お墓は納骨堂や樹木葬墓地など多様化しています。宗教観の変化、葬儀に対する意識の変化などもあり、死後に対する考え方もさまざまです。

しかし、選択肢が増えてしまったために、逝く側の思いと送る側の思いにギャップが生じたり、家族間での意見の食い違いなどが出てきたりするケースが多々みられます。

昨年、厚生労働省は、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の愛称を「人生会議」とし、11月30日を「人生会議の日」とすると発表しました。ACPとは人生の最終段階における医療・ケアについて本人が家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合う取り組みのことを言います。11月30日にしたのは、「いい看取り・看取られ」の語呂に合わせたとか。

残念ながらこの「人生会議」の考え方に、死を迎えた後どうするか、という視点は含まれていません。せっかく最終段階を考えようという方向に舵を取っているのですから、「看取りの後はどうするか」という人生会議も必要ではないでしょうか。

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