日米貿易協議で安倍首相に残された「2つの道」 早くまとめるか、時間をかけてゆっくりか

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迅速な取引は論外ではない。問題は、自動車に関する固定観念を持ち、現在年間約170万台のアメリカへの日本車の出荷台数を大幅に削減したいと考えているトランプ大統領にある。トランプ大統領は、自動車生産をアメリカに大きくシフトさせたいと考えており、日本の自動車に輸入割当制を設定する準備ができている。これはトランプ政権が鉄鋼に関して韓国に強要したような、事実上の自主規制協定だ。

安倍政権は、日本経済、あるいは首相自身の政治的な将来を不利に運ぶことなく、トランプ大統領の勝利宣言のニーズを満たせるような取引を望んでいる。つまり、TPPで取り決めた以上に日本農業への影響がなく、自動車輸出制限もない取引だ。

トランプ大統領のレーダーには引っかからないように

「日本にとっての好ましい成果は、アメリカ側が通商拡大法第232条の行使を完全に差し控えることだろう」とブルッキングス研究所のソリース氏は語る。「また、日本はアメリカへの輸出を削減する輸入割当制を拒否するはずだ」。

このことは、日米間の交渉には時間がかかり、最初はトランプ大統領が交渉に関与しないことを意味するかもしれない。茂木氏もライトハイザー氏も、日本の貿易協議をトランプ大統領の注意を引くようなレベルに持ち上げたいと思ってはいない。予測も制御も不可能な要素をもたらすことになるからだ。

「ライトハイザー氏と茂木氏には、この交渉がトランプ大統領のレーダーにキャッチされないようにするという共通の考えがあると思う」とプレストウィッツ氏は言う。ライトハイザー氏はすでにトランプ大統領が中国との交渉を崩壊させることがないよう苦闘しており、この時点で日本に関してまでトランプ大統領に対処する気はないのだ。

しかし、そう簡単にはいかないかもしれない。「ライトハイザー氏は日本に興味がないので、できることならすぐでも取引を完結させたいだろう」とグッドマン氏は言う。「しかし、もちろん、それはトランプ大統領次第だ。大統領は自動車に関して強い固定観念を持っているので、私がいいと思うような取引でも、大統領は同意しないかもしれない」。

トランプ大統領との取引は何であれ危険なものである。この不安定な大統領は、新しいNAFTA協定での自らの約束を無視し、移民政策に関してメキシコに関税をかけると脅している。要するに、トランプ大統領の言うことは信用できないのだ。日米貿易協議がたどる道が高速道路であろうと時間のかかる道であろうと、今後数週間にわたり、安倍首相は難しい選択を迫られることになる。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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