日米貿易協議で安倍首相に残された「2つの道」 早くまとめるか、時間をかけてゆっくりか

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安倍首相には国内政治という懸念もある。7月の参議院選挙、あるいは衆議院全体も含む二重選挙である。これまでの地方選挙の比較的肯定的な結果を見ると、安倍首相は二重選挙に対するプレッシャーをそれほど感じていないかもしれない。しかし、安倍首相は依然として政治的に困難な状況に直面している。

主に中国経済の低迷が原因で、日本経済は停滞している。5月に発表される第1四半期の数字は、日本の長期成長の終焉を示すものになるかもしれない。さらに、ロシアとの領土および平和条約の取り決めで外交的勝利を手にしようという安倍首相の努力は、ロシア政府の厳しい状況のためにますます困難になっているようだ。

迅速かつ広範な取引も不可能ではない

というわけで、5月下旬に予定されているトランプ大統領の訪日には、多くの課題があるように思われる。この訪問でトランプ大統領は、新しい天皇によって迎えられる最初の外国指導者となる。続いて、6月には日本が主催するG20の会合がある。今月末の安倍首相のアメリカ訪問は、5月のトランプ大統領の訪日とG20会合をスムーズにするためのものだ。

こうしたイベントにより、アメリカとの貿易に関する早期取り決めはますます重要となるように思われる。しかし、世界貿易機関の規則は、農業のような1つの分野にのみ焦点を当てる取引を禁止している。そして日本にとっては、日本経済に大きな衝撃を与え、政治的影響を及ぼすことが必至である自動車関税の脅威が除去されなければ、現時点でこのような交渉をするべき理由はほとんどない。

著名な日本貿易の専門家で、元ホワイトハウスの政治経済政策顧問のマシュー・グッドマン氏は、迅速で広範な取引が可能であると考えている。安倍首相はトランプ大統領に対し、TPPやEUの輸出国に与えたものと同様の農業市場へのアクセスや、日本市場向けの自動車認証に関する規制緩和など自動車産業に関する策を提示することができる。

これらを、アメリカの天然ガスや武器の購入の増加と組み合わせることも可能で、結果としてトランプ大統領が求める日米間の貿易不均衡問題の改善につながることになる。安倍首相は、アメリカ・メキシコ・カナダ間の協定のように通貨問題にも言及することができるかもしれない。

この種の迅速な取引は、農業従事者だけでなく、自動車産業の関税に反対する人々など、アメリカのビジネスにとっても魅力的かもしれない。また、サービス、デジタル技術と貿易、健康産業といった分野に関心があるアメリカ企業や、包括的協定を支持するアメリカ企業をも満足させることができる可能性もある。

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