「チーズはどこへ消えた?」続編が描く迷路の物語 迷路に残ったヘムがそのあとどうなったのか
ヘムがイスから立ち上がってまた歩きだした途端、床の何かにつまずいた。かがんでそれを拾いあげた。ほこりを払うと何なのかわかった。
それは古いノミだった。
自分がこのノミをつかみ、ホーがハンマーで叩いてチーズ・ステーションCの壁に大穴を開け、新しいチーズを探そうとした日のことを思い出した。今も部屋の壁にこだまするハンマーとノミの音が聞こえるようだ。
ビシッ! ビシッ! ビシッ!
ヘムは床を探しまわり、ハンマーを見つけるとほこりを払った。ホーと2人でチーズ探しに出かけたのはずいぶん前のことになると思った。
ホーが恋しかった。ヘムはくよくよ考えはじめた。いまも彼はここにチーズが現れるのではないか、ホーが戻ってくるのではないかと思っていた。
チーズを探さなければならない
しかし、チーズもなく、ホーもいない。
何かしなければならなかった。家にこもって待っているだけでは駄目だ。
迷路に出ていって、チーズを探さなければならない。
ヘムは辺りをかき回し、ランニングシューズを見つけて履いた。ホーと2人でチーズを探しに出かけたときと同じように。靴ひもを結びながら、ヘムは今の事態についてわかっている事実を考えてみた。
どうしても新しいチーズを見つけなければならない。さもなければ死んでしまう。
また、迷路は危険なところで、暗がりや袋小路があちこちにある。うんと注意しなければならない。
そして、もしそれをやりとげ、チーズを見つけて生き延びたいなら、それはひとえに自分にかかっている。自力でやらなければならないのだ。
ヘムはこれらをメモ書きしてポケットに入れた。忘れないようにと。
さもなければ死ぬ。
事実を掌握して、ヘムはほっとした。少なくとも目下の状況がわかったのだ。
彼はハンマーとノミに目をやった。これからの旅で、迷路の奥を探索するのに役立つだろう。
道具を取って袋に入れ、肩にかけた。
新たな覚悟と強力なハンマーとノミで身を固め、ヘムは迷路へと踏み出した。
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