「チーズはどこへ消えた?」続編が描く迷路の物語 迷路に残ったヘムがそのあとどうなったのか

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ヘムは何日もチーズ・ステーションCの近くの自宅にこもって、うろうろ歩きまわり、あれこれ思い悩み、イライラしていた。

いまなお毎日、チーズが現れるのではないかと思い、そうならないことが信じられなかった。自分の居場所を堅持し、ずっと待っていれば、事態は好転すると確信していた。

しかし、そうはならなかった。

それに、ホーはなぜ戻ってこないのだろう? ヘムは歩き回りながらいろいろな理由を考えていた。

ホーのことを考えるヘム

初め、彼は自分に言い聞かせた。「ホーは戻ってくる。今にも帰ってきて、何もかも元どおりになるだろう」。しかし、「今にも」と思いながら何日も過ごしたが、ホーは戻ってこなかった。

ヘムは苛立ちを募らせたが、ふと別の考えが浮かんだ。

「ホーは僕のことを忘れたんだ」

「僕から逃げてるんだ」

「わざとこんなことをしてるんだ! 友だちなのに、どうしてこんなふうに裏切ることができるんだ?」

そう思うと怒りを覚え、考えれば考えるほど憤りが募った。ホーに置き去りにされたこと、チーズがなくなったこと、それに、事態を元どおりにしたり好転させるために何もできそうにないことが腹立たしかった。とうとう彼は考えるのをやめ、叫んだ。

「こんなのあんまりだ!」

戸惑いと苛立ちに疲れ果てたヘムは、お気に入りの肘掛けイスに倒れ込むと、あれこれ考えを巡らせた。

ホーが道に迷っていたとしたら?

ケガをするか、もっと悪いことが起きていたら?

ヘムは怒りを忘れ、ホーのことを考え、彼が恐ろしい目に遭っているかもしれないと思った。

しばらくすると、別の考えが浮かんだ。「ホーはどうして戻ってこないんだろう?」ではなく、「僕はどうして一緒に行かなかったんだろう?」と。

ホーと一緒に行っていたら事態は違っていただろう、と思った。ホーが道に迷うことはなかっただろう。彼に悪いことが起きたりもしなかっただろう。今頃は一緒にチーズを食べていただろう。

どうして自分はホーのように「チーズとともに動かなかった」のか?

どうしてホーと一緒に「行かなかった」のか?

ネズミがチーズにかじりつくように、この問いがヘムの心をかじるように悩ませた。

それと同時に、どんどんお腹が減ってきた。

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