「相続」親が亡くなる前に知っておきたい超基本 相続問題に詳しい行政書士が徹底解説!

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やがて、遺留分を請求する書面が届き、奥さんは子の遺留分である4分の1を渡して手続きを終えることにされました。このケースの場合、遺言書がなければ前妻の子は財産の2分の1を法定相続分として請求することができたので、遺言書は大きな仕事をしたことになります。

奥さんはショックを受けられていましたが、冷静になると、ご主人が遺言書を残してくれたことで大きなトラブルにならなかったことがわかり、素直に感謝されました。

遺言書を書くときは、法定相続人に遺留分があるかないかで書き方も変わってきますので、まずは相続人調査をきちんと行うことは非常に重要です。

相続財産の「正しい分け方」

「法定相続分」とは、法定相続人が遺産に対してもらうことができる割合のことです。法定相続人が1人のときは、当然1人で全部もらえます。被相続人に配偶者がいないときは、子どもがいれば子どもが相続人となり、2人いれば2分の1ずつ、3人いれば3分の1ずつというように、すべての子どもに均等に分けられます。

子どもがいないときは親が相続人で、両親ともに健在なら父母がそれぞれ2分の1ずつです。

親もいないときは、兄弟(姉妹)が相続人で、兄弟が2人いれば2分の1、3人いれば3分の1ずつになります。被相続人に配偶者がいるときは、子、親、兄弟との共同相続になります。それぞれのケースでの法定相続分を、図を使って見ていきましょう。

【ケース1】配偶者と子どもが相続人のとき

被相続人に配偶者と子どもがいるときは、配偶者の相続分は2分の1で、子どもの相続分も2分の1です。子どもが2人以上いるときは、2分の1を子どもの人数で割ると、子ども1人当たりの相続分が出ます。

【ケース2】配偶者と親が相続人のとき

法定相続人が配偶者と親(亡くなった人の親)のときは、配偶者の相続分は3分の2で、親の相続分は3分の1です。両親とも健在のときは、父と母がそれぞれ6分の1となります。

【ケース1】被相続人に妻と子が3人いる時の各相続人の法定相続分は、妻の法定相続分=1/2、子の法定相続分は1/2。子が3人いるので、1/2を3等分することになる
【ケース2】被相続人に子がなく、妻と両親がいるときの各相続人の法定相続分は、妻の法定相続分=2/3、親の法定相続分=1/3。両親とも健在なので、1/3を2等分する

【ケース3】配偶者と兄弟姉妹が相続人のとき

被相続人に子も両親もなく、妻と兄弟姉妹がいるときの各相続人の法定相続分は、妻の法定相続分=3/4。兄弟姉妹の法定相続分=1/4。兄弟姉妹2人なので、1/4を2等分する

法定相続人が配偶者と兄弟姉妹(亡くなった人の兄弟姉妹)のときは、配偶者の相続分は4分の3で、兄弟姉妹の相続分は4分の1です。兄弟姉妹が複数いるときは、兄弟姉妹の相続分4分の1を人数で割ると兄弟姉妹1人当たりの相続分が出ます。

倉敷 昭久 行政書士
くらしき あきひさ / Akihisa Kurashiki

1959年鳥取県米子市生まれ。行政書士法人倉敷昭久事務所代表行政書士。神奈川大学経済学部卒業。米子市役所臨時職員、冠婚葬祭互助会等を経て、2003年に43歳で行政書士試験に合格。同年、米子市に行政書士倉敷昭久事務所(個人事務所)を開設し、相続専門事務所として業務を開始する。2010年に行政書士法人となり、以降、兵庫オフィス(西宮市)、東京オフィス(渋谷区)、新潟オフィス(新潟市中央区)、山形オフィス(鶴岡市)を開設。5事務所を拠点として14都府県で活動中。年間相談件数4000件を超える、日本一規模の相続専門行政書士法人を経営している。

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