ヤクルトで勝ち運なかった投手・原樹理の覚醒 昨季は96敗から逆襲、19年シーズンへの期待
ついに覚醒のときを迎えた原樹理
誰もが、その潜在能力を認めていた。誰もが、「すぐに大活躍するだろう」と感じていた。しかし、なかなかその期待に応えられないもどかしい日々が続いていた。そして、プロ3年目となった昨年、過去2年間の鬱憤を晴らすかのように、背番号《16》を背負う男はようやく覚醒の兆しを見せた。
原樹理――東洋大姫路高校(兵庫県)時代には甲子園に出場し、東洋大学時代には東都大学リーグの最優秀投手に選出されたこともある。数々の実績と、打者が手こずる自慢のシュートボールをひっさげ、2015(平成27)年ドラフト1位で東京ヤクルトスワローズに入団。即戦力投手、新人王候補として、周囲の期待を集めた。
しかしプロ入り後、彼が歩んだ道は決して平坦なものではなかった。プロ1年目の2016年は2勝8敗、2年目は3勝11敗と、つねに黒星が先行した。ブルペンでは、投手コーチがほれぼれとするような剛球を投じた。
しかし、試合になると、好投していても打線の援護がなかったり、「ここぞ」という場面で痛恨の一打を浴びたり、なかなか勝ち星に恵まれなかった。実力はあるのに結果が出ない。いいボールを投げるのに大事な場面で失点を喫してしまう。いつしか、「原には勝ち運がない」というフレーズが独り歩きするようになった。
「僕自身、“勝ち運がない”と言われていたのは知っていたのでムッとするような感じはありましたし、“結果で見返してやる”という思いはずっと持っていました。その気持ちが強すぎて空回りしたこともあったけど、“そこからは逃げられない”と思っていたので、その悔しさを口にすることはしませんでした……」
入団以来、首脳陣にとって、ファンにとって、そして本人にとってももどかしい日々が続いた。周囲の期待を強く自覚していたからこそ、「何とかみんなの声援に応えたい」という思いで練習に取り組むものの、それでも結果が伴わなかった。しかし、昨シーズン後半、ついにその能力が開花する瞬間が訪れた。
それは「覚醒」という言葉が最もふさわしいと思える見事なピッチングだった。一体、彼は何が変わったのか? どのように、目の前にそびえる高い壁を突破することができたのか?
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