ヤクルトで勝ち運なかった投手・原樹理の覚醒 昨季は96敗から逆襲、19年シーズンへの期待

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『再起――東京ヤクルトスワローズ~傘の花咲く、新たな夜明け~』でのインタビューで自身のピッチングについて語った原樹理(写真:インプレス提供)

「それまでは打たれたくなかったら(右打者の)インサイドにシュートを投げていました。割合で言えば、全投球の7割か8割がシュートでした。でも、そのボールを狙われたり、見極められたりして、自分自身が追い詰められるような状態が続きました。

そこで、ボールの回転軸や回転数を計測することによって、もう一度配球を見直すことにしたんです。今まで投じていたストレートもシュートも、実は同じような回転のボールでした。

それでは打者に狙い打ちされます。それで、今まであまり投げていなかった、スライダー、カーブ、フォークを投げるようになりました」

本人の説明によれば、「シュート、スライダー、ストレートが30%ずつ、カーブとフォークが5%ずつ」という割合の投球スタイルに変えた。その結果、「シュートだけに頼らなくても打者を打ち取れるんだ」と実感したという。

「さまざまなボールを投げることで結果が出始めて、それによって気持ちの余裕も生まれました。周りからは、“メンタルが変わったから、結果が出た”と言われたけど、気持ちだけで抑えられるほど、一流のバッターは甘いものじゃないんです。いろいろな球種を投げるようになったし、以前よりも考えて投げて、想像して投げることで、8月と9月の間で5勝1敗という成績につながったんだと思います」

本人の言葉にあるように、昨シーズン夏場以降の原樹理はエースの風格が漂う堂々たるピッチングを披露した。前述したように多彩なコンビネーションによる投球パターンに加え、前半戦途中で中継ぎに転向したことによって、「一個、一個のアウトの積み重ねが先発でも長い回につながるんじゃないか?」と発見できたことも大きかった。

昨シーズン終盤には「後半戦はつねに勝てる気がした」という発言もしている。本人のみならず、誰もが思っていた。「原樹理はついに覚醒したのだ」、と。プロ入り以来、屈辱を養分に育った幼虫が、泥だらけの繭の中でじっと力をためてさなぎとなり、ようやく美しい姿で大空に飛び立つ瞬間が訪れたのだ。

今季は、さらなる覚醒の予感

原樹理にとって、プロ4年目となる2019年シーズンが開幕した。昨年後半に見せた堂々たるピッチングは今年も見られるのか? 今シーズンはさらに覚醒し、ますます飛躍するのか? 注目の今季初先発は4月2日、本拠地開幕戦となる神宮球場での対横浜DeNAベイスターズ戦だった。真価が問われる4年目の最初の登板。

しかし、心配は杞憂に終わる。原は堂々たるピッチングを見せた。7回を投げて被安打3の無失点で、DeNA打線を寄せつけなかった。

特筆すべきはマウンド上でのたたずまいだった。ピンチらしいピンチはほとんどなく、たとえ塁上に走者がいても、落ち着いて自分のピッチングを見せていた。それはまるで、球場全体を支配するかのような堂々たる存在感だった。誰もが期待していた「原樹理」が、まさに神宮球場のマウンドに現れたのだ。

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