鳥の仏教 中沢新一著

チベットに伝えられる「鳥の仏教」と呼ばれる経典の翻訳を通じた仏教思想の入門書。カッコウに化身した観音菩薩が、森の深奥でほかの鳥たちとともに教えを語り合う物語の中に、「仏教思想のエッセンスがほぼ満遍なく網羅」されている。あわせて掲載されている解説に、著者の深い理解が示される。
鳥たちの語り合いには、世界は無常であること、死はいつやってくるかわからないこと、心を汚す行いから遠ざかることの大切さ、の三つの教えが通奏低音のように響く。人々ではなく鳥たちが話し合うことによって、あらゆる有情(心の働きをもっている存在)に対する慈悲の精神を説いているようでもある。読み進むうちに、以前いまひとつわかりにくかったダライ・ラマ14世が語る言葉に納得がいったから不思議だ。
木部一樹による20点の鳥の装画・挿画には、その鳥たちの心の内面も映し出されているようで、これも美しい。
新潮社 1470円
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