欧州鉄道2大メーカー「合併破談」までの全真相

高速鉄道と信号システム技術の独占に懸念

パリ東駅に並ぶ、シーメンス製のVelaro(左)とアルストム製のTGV(右)。いずれも欧州の代表的な高速列車だ(筆者撮影)

欧州委員会(EC)は2月6日、欧州鉄道車両メーカーの2大勢力、シーメンスとアルストムの合併について、これを禁止すると発表した。両社の合併は、市場における公正な競争を著しく損ない、鉄道会社など顧客の選択肢を奪うことにつながるというのがその理由だ。

シーメンスとアルストムが合併に向けた覚書を締結したのは2017年9月。両社は、この合併がどちらかが主導権を握るものではない対等のものであると主張し、2018年末までにはすべての財務的処理を完了する予定でいたが、現実には複数の国において当局の承認を得ることに時間がかかり、2019年になっても完了していなかった。そして迎えた2月6日、欧州委員会から合併禁止という通告がなされたのだ。

両社はプレスリリースにおいて、合併が白紙撤回に至ったことに遺憾の意を表し「欧州の産業にとって明らかに後退した決定となった」と、無念さをにじませた。

なぜ欧州委は反対したか

欧州委員会は両社が合併を発表した後の2018年10月29日、合併に伴う懸念事項を説明するため、2社に対し反対意見書を提出した。現在の鉄道業界において基幹事業となる信号システムと高速鉄道について、いずれも業界最大手の両社が合併すれば市場を独占しかねないという懸念があったからだ。この意見書に対する返答次第で、この合併に待ったをかけようという流れだった。

その後、同年12月12日に両社が出した回答は、合併により重複するいくつかの中核的事業を他社へ売却する、といった対応策を申し出るものだった。その中には欧州委が懸念していた信号システムについて、アルストムの信号システム事業全部門と、同じくシーメンスの信号システム事業の一部を売却する、という提案が盛り込まれていた。

さらにその5日後、アルストムは鉄道車両製造における基幹事業の1つでもあった車体傾斜装置技術、シーメンスは次世代型車両コンセプトである「Velaro Novo」プラットフォームに基づく車両の製造および販売の期限付きライセンスを売却する、と欧州委に提案した。

次ページ車両技術の売却案は「不十分」
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