経済危機が起こらなくても新日鉱との統合は絶対にあった--西尾進路・新日本石油社長
--統合発表会見で打ち出した、日量40万バレルという削減計画を上乗せする考えは。
まずは40万バレル減らすこと、これは(統合会社傘下の事業会社発足後)2年以内の実現が目標ですが、前倒しになる可能性はあります。その程度のピッチでやらないと、需要減に対応できないかもしれない。その数年後に、追加で同20万バレル程度の上乗せは必要だと思います。
--原油相場と同じように、銅相場も低迷しています。これでは金属事業による補完効果を見込むのも難しいのではないですか。
かつては原油価格の上昇時に銅が軟調といったような状況もあった。同じ資源とはいえども値動きが完全に一致するわけではありません。
また、銅鉱山開発は山があれば、まず確実に資源が含有されている。掘ってみないとわからない、ハイリスク・ハイリターンの石油とは違います。さらに、銅の需要は根強く、今後も増加が期待できます。
--上流の石油資源開発で稼ぐメジャーを志向していくのですか。
メジャーの規模まで生産量を引き上げるのは絶対に無理。彼らは古くから中東などに豊富な権益を有しているからです。
現在は両社で日量約15万バレルの生産量を20万~30万バレルにまで拡大したい。上流を手掛ける会社であれば、中堅クラスの規模です。その程度の水準まで上げることができれば、上流から下流までの強固な一貫体制が築き上げられることになります。
--原油相場低迷で油田開発が止まってしまう懸念がありますね。
生産量の目標は変えていませんが、当社の上流部門の担当部署には油田の買収から探鉱へ重点を移すよう指示しています。投資資金の配分もそのようにシフトしました。
最近の価格推移を見るかぎり、油田買収のリスクは大きい。現在の水準を前提に油田を買収した後、さらに値下がりしたらおしまいです。
しかし、探鉱の場合、鉱区取得の価格もそう高くはなく、以前に比べると油田を掘り当てる確率も高まっています。現在のWTIの相場水準でも採算は合います。
原油価格は1バレル=70ドル台が適正水準でしょう。現在の低迷がどこまでも続くとは思えません。このままでは産油国の財政が逼迫してしまいます。消費国側も70ドル台なら、コストを吸収できる範囲でしょう。そう考えれば、油田開発のスピードもそれほど落とす必要はないはずです。
--今回の統合に対する社員の反応はいかがですか。
トップはいい決断をした、と言ってくれています。むろん、自分に直接話す人の意見であることを割り引く必要はありますが、業界立て直しにトップは手を打ってくれたなという評価でしょう。でも、後輩のために美田を残せるかはここ数年が勝負。身の引き締まる思いです。
にしお・しんじ
1940年東京都生まれ。64年慶応義塾大学経済学部卒業、旧日本石油に入社。福岡支店、社長室勤務など歴任、92年財務部長。95年取締役。2000年常務。02年副社長。05年から現職。
(撮影:田所千代美)
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