露呈したムハンマド皇太子の「やりたい放題」 一般市民を監視、拉致、拘束、そして拷問

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アメリカの機密報告書は、緊急介入グループの任務に対するムハンマド皇太子の関与を明記していないものの、隊員はカハタニを皇太子との「パイプ役」と見なしていたと述べている。

2017年、ムハンマド皇太子の指揮の下で多数の王族や実業家、元政府高官が汚職容疑で一斉逮捕され、リヤドにある名門ホテル「リッツカールトン」に拘束された際、カハタニとムトレブはホテル内にいた。資産譲渡に応じるよう圧力をかける活動に従事していたと、現場で2人を目撃した拘束者の関係者らは語った。

「銃弾を使う」と警告したとの情報も

目撃証言によれば、リッツカールトンに拘束された者の多くは身体的虐待を受け、1人が勾留中に死亡した。ただし、緊急介入グループの隊員が虐待に関与していたかは不明だ。サウジアラビア政府は身体的虐待の存在を否定している。

グループの活動の実態が明らかになり始めたのは、カショギ氏殺害事件が起きてからのことだ。トルコの当局者によると、ムトレブとハルビはいずれもカショギ氏が殺害された当時、サウジアラビア総領事館内にいた。アメリカの当局者の話では、事件以前のグループの活動に関する報告書には、カショギ氏の殺害を指示したのはムハンマド皇太子だとCIAが昨年11月に判断したとの情報があったという。

この件について、CIAはコメントを拒否した。

アメリカの情報機関は、ムハンマド皇太子が殺害命令を出したことを裏づける証拠を押さえていないようだ。しかし皇太子の権限の下で、サウジアラビアの情報機関工作員などが実行した同様の任務のパターンはつかんでいる。

ムハンマド皇太子が果たした役割について、アメリカの情報機関は証拠の収集を続けている。アメリカの国家安全保障局は昨年12月に作成した報告書で、カショギ氏が帰国せず、サウジアラビア政府批判をやめないのなら「銃弾」を使うと、ムハンマド皇太子が2017年にある顧問に告げたと指摘した。

皇太子は文字どおりの意味で――カショギを銃殺せよと――言ったのではないにせよ、必要とあらば彼を殺害して口を封じるつもりだったと、諜報アナリストらは結論している。

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