「携帯料金の滞納」で結婚や就職が不利になる日 中国で普及「信用スコア」は日本でも広がるか
ただし、信用スコアが不要かと言われれば、必ずしもそうとは言い切れない。
例えば、レストランや居酒屋などで、大人数の予約を受けつけたものの、当日にキャンセルされ、事前の仕込みなどがすべてパーになったという話が定期的にメディアをにぎわす。
こういった輩に対しては、大幅に減点することで、以降、他店でも予約できないようにすれば、自ずとこうした非常識な行為は減っていくだろう。
あるいは、ネットでウソの口コミややらせのレビューを投稿したり、フェイクニュースを流したりといった行為に対しても、信用スコアを下げるようにすれば、ネットの健全性も維持できるかもしれない。
さらには、例えば、携帯電話料金や家賃の滞納で信用スコアが下がるとする。日本でも婚活サービス、マッチングアプリを利用する際に、信用スコアの提示が求められるようになるとすれば、払い込みを忘れないように気をつけるユーザーが増えるだろう。
もちろん、信用スコアが普及するためには、厳密な本人確認の徹底や業界一丸となった導入が必要になるなど、超えるべきハードルは高い。また、そもそも本人の同意が必要である限り、非常識な行為をする人間は同意しなければ済むだけの話であり、実際は難しいかもしれない。
やはり、日常生活において、高スコアであるがゆえに得られるメリットが多々あり、自然と同意する消費者が増えるような仕組みにするのが現実的だろう。
不正など新たな問題を生む可能性も
将来的に信用スコアが社会インフラとなると仮定した場合、考えなければならない課題は山積みである。例えば、中国ではすでに高スコアの消費者は一部の病院で、診察や支払いの待ち時間が少なくなるという特典が与えられている。しかし、その結果、スコアを上げられない高齢者などが割を食うことをどのように考えるのか。病院や役所など、公共的な意味合いの強い場所では、特典の付与を認めないといったルールの整備が必要になる。
また、結婚のほか、就職や住宅の購入などの人生の大イベントでも参照されるようになると、スコア自体の信頼性も問われることになる。芝麻信用では、現状、スコアの算出アルゴリズムを公開していない。しかし、極めて模範的な生活をしているにもかかわらず、スコアが低い場合などは、消費者が問い合わせをしたり、異議を唱えたりする手段の提供が求められるようになるだろう。
スコアが大きな意味を持ち始めると、何とかしてスコアを上げようと不正を働く人間が出てくることも容易に想像できる。先に説明したとおり、芝麻信用では、SNS上の交友関係などの人脈がスコアに影響する。このため、ちょうどTwitterのフォローワーを金で買うように、高スコアの人間を金で買うということも十分ありうる。
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