帰省ラッシュが大混乱、JR東日本トラブルの内情
帰省ラッシュがピークを迎えた昨年の12月29日。東北、上越、長野、山形、秋田の各新幹線が、午前6時の始発から約3時間にわたり運行を見合わせた。ダイヤの乱れは午後になっても収まらず、112本が運休、146本が遅れ、13万7700人に影響を与える大混乱となった。自然災害以外での輸送障害では、19万人に影響が出た1997年11月以来の規模だ。
きっかけは、前日28日の車両故障や悪天候によるダイヤの乱れ。これにより始発駅にあるべき車両がないなど車両のやり繰りが狂い、翌29日の運行計画を大幅に変更しなければならなくなった。折悪く29日は年末の臨時ダイヤ。79本もの増発があり、計画の変更とそのデータ入力の作業が「夜間では最大規模」(JR東日本)に膨れ上がった。
COSMOSと呼ばれる大規模なシステムによって運行が一括管理されているJR東日本の新幹線だが、実は運行計画の変更については、いまだに人の手で行われている。今回の計画作成には5人程度が携わったが、高度な判断を要するパズル的作業のため、人数を増やして分担するにも限りがあるという。加えて、変更データをシステムに入力する作業はたった一人の担当者に頼らざるをえない。
結果、夜を徹して行われた変更作業は29日の午前5時45分までかかった。これまで、作業完了が午前3時を回るのもまれだったという。鉄道システムに詳しい千葉工業大学情報科学部の富井規雄教授も「これだけの規模の乱れはめったになく、気の毒としかいいようがない」と語る。
システムは正常に稼働
とはいえ、JR東日本に落ち度がまったくなかったとも言い切れない。
COSMOSは、平時なら午前5時までに日付を切り替えるシステムだ。5時過ぎのデータ入力の例がなかったこともあり、その刻限の認識が薄れていた。
また、日付の切り替え作業も困難を極めた。システムを開発した日立製作所と対策を検討し、運転開始にこぎ着けたのは午前8時55分。JR東日本は「切り替えがほかのシステムにどこまで影響するのか、判断に時間を費やした」と説明するが、5時を過ぎたら切り替えが難しくなるとの認識も欠いていた。
JR東日本は「鉄道事業者の中でも運行管理の自動化、機械化には積極的」(関係者)といわれる。だが、異常時の現場対応など、マン・マシン・インターフェースの詰めが不足していたことは否めない。システム自体が正常稼働する中で発生した輸送障害は、大規模なトラブルがつまるところ認識の甘さから生じることを浮き彫りにした。
(水落隆博、堀越千代 =週刊東洋経済)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら