厳しさが増していく自動車の環境規制――。それらをクリアする観点で見れば、今後ますます電動化は進み、クルマ作りにおいて外せない要素となっていく。かといって、100%モーターで走るピュアEV(電気自動車)の場合、充電のタイミングを考慮する必要があるなど、乗り方に制約が生まれるのも現状だ。環境基準を満たすパワートレーンの刷新において、まだまだエンジンが果たすべき役割は大きい。
20年ぶりの直6エンジン復活
メルセデス・ベンツのフラッグシップセダンとして、このクラスのマーケットをリードしてきた「Sクラス」だが、2018年3月に直列6気筒(直6)のガソリンエンジンを20年ぶりに復活させて話題を呼んだ。
エンジン回転の滑らかさ、力を発揮するパフォーマンス面においても「完全バランス」といわれる直6エンジンだが、かつてのメルセデスの直6は、衝突した際に人にとって安全な空間が確保できないという懸念などから、日本では1997年を境に商品ラインナップから姿を消し、V6エンジンに置き換わっていた。
20年の時を経て、現代的なコンセプトをもとに開発された直6のガソリンエンジン(M256)は、衝突安全を確保する全長が短い設計と高効率化を実現してきたもので、他社に先駆けて48Vの電気システムを組み合わせた「S450」のモデル名で販売。環境性能だけでなく、アイドリングストップ後のエンジンの再始動を滑らかにする効果や静粛性の向上に寄与し、Sクラスに求められる快適性とパフォーマンスを見事に体現してみせた。
電動化、自動化、ネットワーク化により、クルマの価値が大きく変わろうとしている中で、メルセデスはエンジンなどの基本設計を共用化して、生産の効率化や他車種に搭載しやすいことに寄与するモジュール化を実施して、魅力的な商品を提供することに力を注いでいる。
Sクラスもそれにならって、2018年9月には、ガソリン仕様の直列6気筒と基本設計を共有する直列6気筒のクリーンディーゼルエンジンを搭載した「S400d」を日本市場にリリースした。OM656と呼ばれる直6ディーゼルはアルミニウム製のシリンダーブロックにスチール素材のピストンを組み合わせて摩擦抵抗を40%以上低減するなど配慮されたことで、700Nmもの圧倒的なトルクを発揮するものだ。
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