ベンツ「Sクラス」のディーゼルは何が違うのか 乗って感じたディーゼルらしくない一面とは

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高速域の伸びに影響を及ぼす最高出力は340psで、歴代メルセデスのディーゼルエンジンの中ではトップを誇るスペックなのだという。この新しいディーゼルエンジンを搭載した「S400d」はSクラスの中ではエントリーモデルに位置づけられているが、どうやらただ者ではなさそうなのである。このクルマを試乗した自動車ジャーナリストたちは、軒並み高い評価を口ずさむのだ。「百聞は一見にしかず」ということで、S400d 4MATICに試乗することになった。

さっそく運転席に座ってエンジンを始動すると、そこにはディーゼル特有のブルンとくる振動や騒音が耳に入ってくることは一切ない。エンジンルームとキャビンの遮音も行き届いているが、エンジンルームの外で耳を澄ましてみても、ガラガラという音が聞こえてこない。

発生した振動を遮音で封じ込めるのが一般的なディーゼルエンジン車の手法だが、S400dの場合、エンジンそのものが発生する振動が根本から低減されているのだと感じる。これまでさまざまなディーゼルモデルに試乗してきたが、ここまでやりきっているケースはまれだ。

身のこなしは恐ろしいほどスムーズ

期待感が高まったところで、一般道をそろそろと動き出してみる。アクセルはペダルを軽く踏み込み、低回転で走行している状態でも、回転フィールに粗さを感じさせるところがない。それよりも先に感動さえ覚えるのは、滑らかな感触を与えてくるステアフィール。クルマの身のこなしが手のひらに伝わるわずかな反力から緻密に感じ取ることができるもので、5.1mを超える全長、1.9mの全幅、2tの車重をものともせずに、イメージどおりに取り回していける。

特に、発進、巡航、減速、交差点の右左折など、身のこなしは恐ろしいほどスムーズで、エンジンルームに搭載されているパワーユニットがガソリンエンジンなのか、ディーゼルなのかということに意識はいかない。あくまでも、Sクラスとして乗員をもてなし、振る舞うことにすべての力を注いでいることが伝わってくる。

「技術は人のためにある」

そんなメッセージが今回のディーゼルモデルの走りの隅々から感じられる点で、改めてメルセデス・ベンツは、乗り手をもてなし、安心感を与え、優れたシャシーを堪能するために存在するブランドなのだと実感させられたのであった。

藤島 知子 モータージャーナリスト

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ふじしま ともこ / Tomoko Fujishima

幼い頃からのクルマ好きが高じて、2002年より市販車やミドルフォーミュラカーなどのレースに参戦。2017年は女性初のプロレースシリーズの競争女子選手権「KYOJO CUP」に参戦するなど、自身のドライブ体験を通じたレポートも行っている。現在はレース活動で得た経験や走り好きの目線、女性目線をもとに自動車専門メディアやファッション誌などに寄稿。テレビ神奈川の新車情報番組『クルマでいこう!』は出演10年を迎え、お茶の間にクルマの楽しさを幅広い世代に向けて発信している。趣味は国内外問わず、好奇心の赴くままに走る冒険ドライブ。日本自動車ジャーナリスト協会会員、2019-2020 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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