ヘルシンキにあって日本にない観光政策の視点

数が目標の観光ブームはいつか破綻する

こうした長期滞在に熱心な旅行者への支持を得るために、フィンランド政府は、地元の専門家が念入りにキュレーションした、使いやすいデジタルツールを提供することに尽力している。

数年前、ヘルシンキは他都市とのさらなる差別化を図るため、クルーズ船の旅行者に向けたマーケティングを完全に停止する、という大胆な決断を下した。ヘルシンキマーケティング(都市の取り組みを統括するDMO)の広報担当者によると、クルーズ船旅行者は、持続性の観点から、世界中の都市に大きな負担となりかねないタイプの訪問者だという。

まずは訪日客の「分散」に力を入れよ

最近日本でも、日本人以外のグループを宿泊拒否する施設が増加している、とのニュースが話題を呼んだ。報道によると、マナー違反が散見される旅行者の多くはクルーズ船の乗客だったという。ここでもヘルシンキは他の都市に先んじているようだ。

「観光公害」と言われるまでになった現状を改善するために、日本政府は何ができるだろうか。VRで魅力的な観光地をくまなく再現するには及ばなくとも、ヘルシンキの型破りなマーケティング手法から学べることは多い。

ヘルシンキの手法をまねるのではなく、別の方法で日本に訪れようとしている人たちの啓蒙活動を行うこともできる。例えば、京都の寺社仏閣の混雑を緩和したければ、一部の観光旅行者を大分県の国東半島のような場所に誘導すればいい。旅行者が「スピリチュアル」な体験を求めているのであれば、こうした名所こそ欧米人が日本に持つイメージにぴったりの場所なのだから。そうすることによって、観光客を日本全国に「分散」することが可能になる。

日本の数字ベースの観光政策アプローチと比較すると、ヘルシンキのブランドベースのアプローチは、観光産業全体が狂騒する中で、新鮮な一陣の風のようだ。ただここで肝に銘じたいのは、学ぶべきことは、単に技術的な戦略のことではなく、より俯瞰的な視点で語るべき教訓のことだということだ。

ヘルシンキの例からも明らかなように、サスティナビリティーというのは、問題が生じる前に対処しなくてはならない。日本が今行動を起こさない限り、すでに京都を悩ませている観光公害は、年間訪日旅行者が4000万人に達する頃、すでにほかの地方都市にも伝播していることだろう。

もし日本がオリンピック開催後も、国際的な観光客を継続的に惹きつけたいのであれば、手遅れになる前に今すぐサスティナビリティーの検討を始めるべきである。レストランやバーと同様、日本が今後何年にもわたって訪問者を魅了できるブランドを創造しない限り、現在のブームはおそらく長く続かないだろう。

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