『新歌舞伎座』建設で浮上する利益背反のおそれ、歌舞伎座上場維持に身を削る松竹の不可解

求められる株主への説明

(株)歌舞伎座の時価総額が膨らんだ理由は、簿外に膨大な不動産含み益を持つことに加え、株主優待で歌舞伎座の招待券を付けている点が考えられる。このため、発行済み株式数の半分近くを占める個人が株を手放さず流動性が低い。また、歌舞伎興行は松竹が行っているのに、劇場の大家である(株)歌舞伎座の株主優待に劇場招待券を付けたことが、歌舞伎座株の時価総額高止まりの一因になっている。

(株)歌舞伎座をTOBできない松竹は、再開発期間中も(株)歌舞伎座の上場を維持するための荒業を考えた。それが、建て替え中の収入として(株)歌舞伎座が保有する土地に対し松竹が賃借料を支払うというスキームだ。10月20日の発表資料では、松竹のSPCが(株)歌舞伎座に対してオフィスビル用地の賃借料として、年間20億円支払うとしている。これなら(株)歌舞伎座の売上高はほぼ横ばいになり、東証の上場を維持できる。

ただし、年間20億円の支払いは、今期営業利益予想9億円の松竹経営にとって大きな負担であることは確かだ。現在、松竹は毎期6・5億円を劇場賃借料として(株)歌舞伎座に支払っているが、松竹は歌舞伎座を含めた演劇事業で売り上げ250億円弱、営業利益12億円を上げているので、この支出は経済合理性があると考えられる。しかし、10年5月からの建て替え中は、期間利益をまったく得られないビル建設用地を借りるため毎年20億円支払うことになる。松竹の株主と(株)歌舞伎座の株主との間で利益背反が起きるのだ。

前述のように松竹は建設予定地の4割弱を保有している。逆に(株)歌舞伎座が松竹保有地に対して賃借料を支払うなら釣り合いがとれるが、そのような発表はされていない。

また、松竹がビル完成後も土地賃借料20億円と新劇場賃借料を支払い続けるのなら、これを機にTOBしたほうが長い目で見て安く済むのではないかという疑問も残る。

松竹の関係者は「詳しくは正式発表したときに説明する」としているが、期間利益を生まない土地の賃借料として、なぜ毎年20億円払う必要があるのか。そしてなぜ、(株)歌舞伎座の上場維持に固執するのか。近々発表される詳細な事業計画で、松竹の経営陣は、株主に対し明快な説明を求められる。

(広瀬泰之 撮影:今 祥雄 =週刊東洋経済)

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