小田急複々線化1年、狙い通りの成果はあったか 顕著な乗客増が見られた区間はあるが…
なお、複線区間の列車本数に変化がなかったわけではない。上り新百合ヶ丘―向ヶ丘遊園間は各方面からの列車が集中する複線区間の中でも最も高密度運転の区間となったが、昨年の複々線化ダイヤでここもピーク1時間に3本増発され、1時間あたり27本から30本となった。この稠密な運転は、以下のような施策をもって実施されている。
複々線化達成以前のダイヤでは、朝ラッシュ時のこの区間は各停と準急の計14本が各駅に停車する列車であり、残る13本が急行以上の通過列車だった。それを各停と準急の合計を12本に抑えることで余白の時間を生み出し、さらに新百合ヶ丘と向ヶ丘遊園の両駅は上りホーム1面2線を左右交互発着とすることで追い込み時分を短縮し、それにより快速急行などの通過列車を5本増の18本とした。
また、通過列車が通常の運転方法で走行すると先行の停車列車に追いついて徐行や停止を繰り返し、後続の列車にも遅延が波及しやすいうえ、列車が詰まると踏切の遮断時間が大幅に増えてしまう。そのため、通過列車に時速45kmの速度制限をかける抑速制御を実施することで、列車間隔を保ちながら運転することとされた。あえて時速45km走行をするのは百合ヶ丘―生田の2駅間で、生田―向ヶ丘遊園間は各駅停車が緩行線側に入るとすぐに急行線の進路が開通するため、抑速の速度も時速70kmに引き上げられる。
通勤ロマンスカーも増発
複々線化の達成は特急ロマンスカーの充実にもつなげられた。
複線区間が残り線路容量が限界だった当時は新宿着7時30分台から9時15分ごろまで約1時間40分の間、上り特急を運転できなかった。これがほかの一般列車を圧迫せずに運転可能な時間帯が拡大し、新宿行きと千代田線直通を合わせて4本増発している。特急の設定がない時間帯は約1時間に縮小している。これにより朝の通勤特急は7本から11本となった。この際の改正では、発展が著しく小田急自らでも開発を進めている海老名を特急停車駅に加え、小田原線系統の朝の上り特急の全列車を停めている。
特急ロマンスカーの存在は、競合する他路線との差別化を図るうえで大きなアドバンテージであり、有料着席列車が拡大する中でも快適性は群を抜く。朝間4本の増発により座席数は約5割増しとなったが、それがほぼすべて、特急利用人員の増加に結び付いている。
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